新東海道五十三次 (河出文庫)
新東海道五十三次 (河出文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
一九の『東海道中膝栗毛』のパロディ小説だと思っていたが、実態は江戸後期の旅に纏わる諸々の事柄を考証したもの。こういう井上ひさしもあるのだなというのが全体を通しての感想。「お蔭参り」から飯盛り女の呼称方言など、よく言えば縦横無尽、また見方によれば脱線続き。考証としての価値はあるだろうが、期待していた井上ひさしの口調と文体を楽しむという風にはいかなかったのはまことに残念。
2018/12/29
saga
冒頭の五十三次ポルノ版で「もしや?」と思ったら、やはり筒井康隆氏との親交がある著者だった。しかし、回が進むにしたがって、だんだんアカデミックな内容になっていく筆致。「五人組帳の裏返し」で、十返舎一九の『膝栗毛』を文学ではなく、江戸の庶民を仮想の旅で楽しませる娯楽本と論破しているのが気持ち良い。日常生活と旅は、表と裏、正と邪、聖と猥というのが胸にすとんと落ちる。
2018/12/18
Takao
2013年3月20日発行(初版)。初出「文芸春秋デラックス」(1974年12月号〜1975年12月号)、単行本は1976年5月、文春文庫1979年7月発行。「東海道中膝栗毛」のパロディと勘違いして図書館で予約したが、全く違った。江戸から京までの道中から諸方面に脱線(発展?)し、膨大な資料を活用し、縦横に薀蓄が披露されている。学童疎開の話、五人組の話等が印象に残っている。最後は一九論。「一九は生涯流民として通したために時代が見えていたのだ」。著者の「手鎖心中」と一九の「東海道中膝栗毛」を読んでみたくなった。
2017/03/19
ばん
時々「何を書いてるんだ(-_-;)」という部分もありましたが、おかげまいりなど「なるほど、そういうことだったのか」と思いながら読んでいました。江戸時代において、旅というものが特別で、旅人たちの心情もまた特別だったというのがよくわかりました。
2015/02/28
sawa
★★★☆☆ 「東海道中膝栗毛」のもじりで書かれたエッセイ集。下ネタ、言葉、歴史、文化、様々な事について饒舌に語る語る。ぶわーっと話されて煙に巻かれてしまう感じ。山藤章二の挿絵が最高。(図)
2013/04/29
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