ミューズ/コーリング (河出文庫)
ミューズ/コーリング (河出文庫) / 感想・レビュー
ちぇけら
舐めて。かきまわして。白いミューズの匂いのする手手手手手で。先生に触れられて、はじめてわれめができたみたいに、たくさん濡れた。縛って、荷物みたいに。先生にぜんぶ捧げる。私は先生のなかにいて、マニキュアはとても赤い。「セックスは、始まりでなく終わり」先生は、優しかった。終わりたくないのに離れない、体と体はつながったまま。先生は私と凹凸だけでつながろうとした。私は、ミューズ。美神。先生の娘の声が聞こえる。私はただ脚を開いてるだけ。バカね先生が見てるのはただの分裂した粘膜。私は雨に打たれて、濡れた。
2019/01/17
skellig@topsy-turvy
冷たいのに、時に人の体温を感じる水流めいた語り口。個人的にはかなり好きな題材の短篇ばかりだったので要再読。歯と自己を結び合わせた話が目立つが、分断・刻印される自分、という解離イメージが全体にあるような。女性と介護士の、自傷を通じた不思議な繋がり「コーリング」、自分を持て余す「最大幅七ミリ」あたりが特に好き。
2013/07/16
さの棒術
登場人物の感情は想像もできない。でも感触は伝わってくるし説得力がある。ほんの一瞬の、それこそ刹那に湧きあがってくる感触を、記憶の底から呼び覚まされる文章に驚く。心ではなく間違いなく体。体と言っても神経を伝って脳で知覚する感覚ではなく、細胞レベルで感知する感触だ。自分の細胞やDNAを意識させられるし、そこに宿る目に見えない、心でも感じられない深い意識。もしかしたらそれが魂なのかもしれない。或いは生命。それを言語化できるこの作家の才能には驚嘆する。
2016/10/11
sukoshi...
★★★
2022/01/03
Yokosuke
目で追うだけで、心と体に痛くて苦しくて気持ちいい感触を味わえる。
2016/06/07
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