「悪」と戦う (河出文庫)
「悪」と戦う (河出文庫) / 感想・レビュー
さや
たまたま手に取った一冊の本が、想像以上に面白く、引き込まれることがある。そんなとき、やっぱり読書っていいなって思う。軽く読みやすい文体で、すらすらと読み進めることができるのに、何故こんなにも重く残るのだろう。弟のキィちゃんが悪の手先ミアちゃんに連れ去られてしまう。ランちゃんは救い出すために悪と戦う!しかし、ここでの戦うは力は使わない。「悪って何?」「何が正義なの?」と問い続けるのだ。それが悪と戦うことなのだ。私はこの問と戦い続けなければならない。
2017/09/14
ちぇけら
「あたしはパパもママも見てない、パパもママもあたしを見てない、あたし、見てもらいたかった、それから、見たかったよ、世界を、」世界のために ランちゃんは戦う 3歳のからだが 不条理な悪と 寒いよ孤独だよ 戦うということ なにが正しい? 自分も悪だと思うし 愛するって大人になるって よくわからなくて ふみとどまりたくなる 「ユーは、夢か現実かはっきりしてから、行動を決めるのかい?そんなことしてたら、間に合わないことだってあるじゃん」 みんな立ち向かっている この世界に 不条理な悪に 強く そして優しく
2019/04/25
もちもちかめ
わらをもつかむ思いで読んだら、ものすごく実践的な悪との戦い方を丁寧にこれ以上ない親切さで、人類にできうる限りの描写で、解説してあった。感謝しかない。こうやって戦えば良いんだね。そして、皆少しずつ、少しずつ悪と毎日毎分毎秒戦ってるから、世界が壊れなくて済んでるのね。感動的。感動。美しいものは美しいまま生きていてもいいんだなー。でもそうすると、悪がピンポイントでターゲットにしてくるのよね必ず。悪にならざるを得ない哀しみやつらさを、最後見事に表現してくれていて、それもホッとした。なるほど悪が悪である理由。
2019/03/09
田氏
高橋源一郎の小説のなかでは「わかる」ほうの部類。ゆえに、わかりにくい。もっとも、わかりにくいんだぞ、ということをわからせにくるのが、高橋作品の常なのだけれど。そもそもが題名に入っている「悪」、こんなにわかりやすくわかりにくい主題も、そうそうあったものじゃない。だからむしろこのタイトルは、「悪と」よりも、「戦う」のところに、確かさをおぼえる。「悪」を定義しようが未定義のままに置こうが、そのなにかは確かに、なんらかの応答を、われわれに強いてくる。何らかの行動をするであれ、沈黙するであれ、それは「戦い」なのだ。
2022/11/27
かえで
3歳児の男の子「ランちゃん」が「悪」の手先である女の子、ミアちゃんに連れ去られた弟のキイちゃんを救うため、謎の少女マホさんとともに「悪」と戦う話。これ以上、ストーリーは書きようがない。幻想的な世界観、寓話・童話的な展開・文章は宮沢賢治(作中で引用されている箇所もある)を彷彿とさせるが、暴力的な描写や延々とシュールリアリズムのような展開になるのは、非常に高橋源一郎っぽい。この人の作品には常に「言葉」の力、のようなものが意識されているのではないかと思う。「悪」とは何なのか・・是非読んで確かめてほしい。
2015/03/01
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