あられもない祈り (河出文庫)
あられもない祈り (河出文庫) / 感想・レビュー
さてさて
『読んでいて苦しい。本当に苦しい。でも逃れられない』と語る〈解説〉の西加奈子さん。小説はあくまで架空世界の物語であり、登場する人物は想像上の産物です。主人公がどんな苦労・苦難の人生を送ろうがフィクションです。そんな苦労や苦難を読者が背負いこむ必要は当然にありませんが、危うく主人公の苦労や苦難の人生に巻き込まれる怖さを感じました。読者を負のスパイラルに引き摺り込む蟻地獄のような怖さを持ったこの作品。息が詰まるような鬱屈とした作品世界の中に、一方で島本さんらしい美しい表現の魅力にも囚われた、そんな作品でした。
2021/07/05
ゆいまある
タイトル買い。冒頭の一文から官能と背徳の匂いに打ちのめされる。自己肯定感の低い女が、殴る男と暮らしている。金持ちで不器用な年上の男(物語途中で既婚者となる)と恋に落ちる。奪えないから自分を責め、手首を切り、奪えないから男を詰り、傷つけ、寸暇を惜しんで貪り合う。不器用だ、未熟だと連呼しながら、恋愛中は誰だって頭の悪いことしかしないと思い出し、過去の自分の日記を読んでる気になる。もう二度と繰り返したくないけど、大人になって安全な場所からあの苦しさを再び見てみたい私の為の本。子供には早い。
2019/02/10
のり
あなたと私の関係は共依存?あまりにも軽率な行動を繰り返す。名目は恋愛小説だと言うが、歪んだ型は否めない。自分を大切に出来ない者は他者を思いやる事も出来ない。都合のいい相手との恋愛は別物だと思う。
2019/02/05
青蓮
島本さんの本、二冊目。島本さんの書く恋愛小説は胸が苦しくなるものばかり。感情が生々しく迫ってきます。「あなた」と「私」の関係は恋愛と言うよりも、何かもっと別なもので結びついてるように感じました。お互いが現実から目を背けているような、逃げているような、そんな関係。他にも登場人物はいるのに「私」と「あなた」だけの世界が濃密に浮かび上がる。二人の間に窒息しそうな程の苦しさが横たわる。優しく、甘美なものだけが恋愛ではないと教えてくれる作品。
2015/08/07
misa*
島本さん作品、これで4冊目。なんだろう、前回読んだ「RED」と少し近いように感じた。というのも、また主人公に馴染めずそのまま読み終えた感が強い。文章などは綺麗だし表現も美しいけれど、弱さの部分があまりにも露骨で理解し難いことが多かった。とりあえずこの辺で島本さん作品は休憩します。
2016/05/27
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