自殺サークル 完全版 (河出文庫)
自殺サークル 完全版 (河出文庫) / 感想・レビュー
黒瀬
難解です。映画化もされた本作は、54人の女子高生が新宿駅のホームから一斉に電車へ飛び込むという鮮烈な幕開けで始まるのですが、実際の内容は崩壊した家族に焦点を当てています。自殺クラブの存在があまり生かされていないような哲学じみた説明が多く、視点の入れ替わりも激しく、それでいてページ数・文字数共に少ないため説明不足な感が否めませんでした。 やり直し、生まれ変わり、救済を描きたかったのだろうか。
2020/05/01
スカラベ
「いっせーのせっ!」―女子高生54人が、新宿駅のホームから、電車に飛び込んだ。出だしは衝撃的。よくよく考えれば社会で溢れた人達の中で本当の自分って何?みたいな深いテーマがあるんだけど、読み進む中でこのメッセージを受け取るのは難しい。ところどころで描写がぼんやりと焦点を結ばず迷子になってしまいそうになる。映画監督らしい書きっぷりだからかな。『役割』、「あなたはあなたの関係者ですか?」ってのがこの小説を読み解く鍵のような。2つの映画「自殺サークル」、「紀子の食卓」を合わせた"完全版"の話となっているようです。
2013/11/01
青蓮
同タイトルの漫画は読んだことがありますが、小説は読んだことがなかったので手に取りました。読んで漫画とは全くの別物でちょっと驚きました。漫画の方が「自殺サークル」というキーワードが明確に打ち出されていて解りやすいです。本書は読み進めていくうちに個の輪郭が消失していくような感覚がありました。それが正しく自殺「環」(サークル)なのかと。人間の内面を探るような独特の哲学も面白く、色々と考えさせられます。薄くてすぐ読めてしまうけど、深く重い作品。映画は観たことはないのでそちらもチェックしたいです。
2014/06/16
のの
インパクトのあるタイトルと帯に引かれて読んでみたら予想と全然違う、自己と他者との関係性を問うような話で驚いた。報酬をもらって客のニーズにこたえる「役割」を演じるのはとてもわかりやすいし、玄人意識だって芽生えるだろうけど、報酬もご褒美も賞賛も生じない現実の世界のなかで、自分の役割を察して目覚めることなんて、月をほしがるようなもの。「客」なんてわかりやすい他者はおらず、数えきれないほどの役割を、自覚する暇もなく演じていかなくてはいけないのが生きることなのだから。
2014/01/26
skellig@topsy-turvy
「いっせーのせっ!」で54人の少女たちは電車に飛び込む。物語る視点が入れ替わりながら次第に明らかになる”自殺サークル”の輪郭を追いつつ、読み手も常に「あなたはあなたの関係者ですか?」と煽られる。当初あまりピンとこないこの文句も、「演じること」「なりきること」「自分を殺し再び生まれること」を経てしっくり来るようになってきた。題からすると意外だが、ここでの「自殺」には生へ向かう力が満ちているような気がした。
2013/10/01
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