寝ても覚めても (河出文庫 し 6-7)
寝ても覚めても (河出文庫 し 6-7) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
タイトルはあまり魅力的ではない。金井美恵子の小説にありそうではあるが。一方、小説の空気感は独特の魅力がある。構成は破綻しているのかと思うくらいに奇妙である。最初から90%までが長い長い序章で、最後の10%で一気に加速して終焉を迎えるといえばいいのか。登場人物同士の関係性もまた独特である。しかも、最初は会話の全てが大阪弁で進んでいくので、小説世界に入り込みにくいのではないかと思われる。舞台が東京に移ってからも、主な登場人物たちは相変わらず大阪弁なので、そこに一種奇妙なネジレ空間のようなものが生じるのである。
2020/09/15
さおり
一度は挫折したものの、そのあとぐんぐん読める本が続いて自信を取り戻し、今度は何とか最後までたどり着いた。ずっと読みづらくて何がいいんかわからんぜよと思いながら読みましたが、最後の急展開を読んだらありかもと思ってしまった。いや、朝子はなしだよ、もちろん。でもこの小説はありかも。しかし私、柴崎さん作品はたぶんもう読みません。常々、小説をうまく読めるかどうかは読解力云々ではなくて作者との近さの問題と思っていて、近すぎれば説明過多、遠すぎれば意味不明。私にとっては宮下奈津さんとかは近すぎ、柴崎さんは遠すぎです。
2018/08/08
らむり
序盤で挫折し、途中から斜め読み。最後に解説読んだら、なんだか面白そうなことが・・・。先に解説読んでれば良かった(><)再読かな。
2014/07/17
安南
主人公朝子の視点《カメラアイ》で写し取られた写真そのものがこの小説を形造っている。つまりは《信頼できない語り手》朝子の脳内ファインダーを透してのみ現像された恋。窓枠、鏡、地下鉄の出入り口、果てはテレビ画面までもがフレームに。過剰に凝りまくったカメラワーク。ズームイン、ズームアウト、パン、フォロートラック…。こちらの視覚と脳の焦点を合わせるのが忙しくて眩暈を起こしそうだ。全体に嫌味なくらいに仕掛けがちりばめられ、技巧的過ぎてちょっと疲れた。相似形へのこだわりなど煩いほど。荒俣宏まで出してくるとはなぁ。
2014/10/03
エドワード
大阪で社会人一年目の朝子は、東京から来た不思議な男・麦に一目惚れ、恋に落ちる。ところが突然麦が姿を消す。三年後、東京へ出た朝子は、麦と瓜二つの大阪男・亮平と出会い…。メインの物語に様々な人間がからみあう。柴崎友香さんの物語はしばしば四次元だ。大阪と東京・過去と現在。ゆったり大阪とせかせか東京のスピード感の違い、街と人の描写で見せる様が見事だ。うつりゆく朝子の感情表現、他の人間には麦と亮平が瓜二つに見えないところが面白い。「恋とかって、勘違いを信じ切れるかどうかだよね。」ごもっとも、最後に驚きの結末あり。
2018/08/16
感想・レビューをもっと見る