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枯木灘 (河出文庫 な 1-1)

枯木灘 (河出文庫 な 1-1)

枯木灘 (河出文庫 な 1-1)

作家
中上健次
出版社
河出書房新社
発売日
2015-01-07
ISBN
9784309413396
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枯木灘 (河出文庫 な 1-1) / 感想・レビュー

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優希

血の哀しみがフーガのように繰り返して積み重なっていく物語ということが言えると思いました。同じことが少しずつ形を変えながら奏でられる協奏曲ならではこそ胸に刺さる痛みがあります。憎悪と憧憬と血の呪縛、愛と痛みの交錯。これらが織りなす中で運命から逃れることができるのに逃れることなく破局へと流れ着くのが必然と捉えることしかできないのに何とも言えない感覚に陥りました。

2017/02/03

こばまり

太鼓の音のように繰り返される労働、木や土、蝉の声に染み込んでしまう主人公秋幸の姿にうっとり。故郷に住んでいた頃、夕暮れ時や明け方に山々を見つめると、体ごと持って行かれるようなうな一種独特な心持ちになったことを思い出しました。没後20余年を経てもただならぬオーラを放つ中上文学に組み敷かれたような読書体験。強く優しく美しく脆い雄の獣、秋幸のその後が気になるので『地の果て 至上の時』も読まねばと。

2015/08/17

まさむ♪ね

蠅の王の前では死さえも無意味。もはや誰もどうすることもできないだろう。その男の像はどんどん大きくなり、拒めば拒むほど秋幸の血肉に割り込んでくる。それでも、秋幸には心休まる居場所があった。何人も侵すことのできない彼だけの聖域。無心につるはしをふるいシャベルをつき立てる。全身をつたう玉の汗、土と草のいきれ、照りつける日の光、自然とあふれてくる涙。労働が汚れた体と心を洗い流してくれる。ただ生きる、それがこんなにも苦しく難しい。今は見えない光、ならばきっとある出口を探すための地図を描こう、逃げ惑いながらでもいい。

2016/11/01

HANA

血は水よりも濃いという。普段は気にも止めないが、ある時はそれがドロドロと纏わりついてきて粘りついて離れない。先ほどフォークナーの『アブサロム、アブサロム!』を読んだのだが、物語に底流する血縁や常に屹立して離れない父、近親相姦と共通するものの多さに驚く。こちらは血というより家の問題も多そうだけど。ただアメリカの呪いみたいなものが徐々に暴かれていく向こうに対して、こちらの主人公はひたすら内省的。事件らしい事件が起きるのは最後だけ。それなのに、主人公の立ち振る舞いに、古代の神話の英雄めいた姿を感じさせられた。

2015/01/15

touch.0324

『枯木灘』が『覇王の七日』を併録して新装された。河出文庫からのお年玉である。『覇王の七日』は『枯木灘』のラストシーンからの7日間を、主人公・秋幸の父・浜村龍造の視点で描いた短編。閉め切った部屋で二人の息子を思う龍造の姿は、路地の者らから蛇蝎の如く嫌われている"路地の蝿の王"の姿とは似ても似つかず。『枯木灘』の余韻がより深く感じられる珠玉作。※『枯木灘』の感想は旧版に記載。 http://i.bookmeter.com/cmt/42793283

2015/01/12

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