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王国 (河出文庫 な)

王国 (河出文庫 な)

王国 (河出文庫 な)

作家
中村文則
出版社
河出書房新社
発売日
2015-04-06
ISBN
9784309413600
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王国 (河出文庫 な) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

期せずして、直前に読んだ小説とグノーシス繋がりとなった。もっとも本書は、あとがきで作者自身が語っているほどにはグノーシスに関わりがない。また、木崎はけっして神などではなく、あくまでも人間的な「悪」の範疇に留まるだろう。そして前作『掏摸』における「塔」と、この『王国』の「月」のシンボルを、作者は聖書あるいは神話におけるシンボリズムと解しているようだが、これらはそれぞれの作中の主人公の希薄な「生」の唯一の拠り所として機能しているのである。主人公の抱える閉塞感が息もつかせぬ緊張の内に語られるところが本書の魅力。

2015/06/18

zero1

裏社会に生きる女は何を選択した?「掏摸」の兄妹編。ユリカは娼婦を装い、著名人たちの弱みを矢田に流していた。彼女の前に出てきたのが「掏摸」にも出てきた木崎。彼女は木崎と矢田の情報奪取争いの中心にいた。自らの命が危うい中、生き抜けるか?ヒリヒリするような緊迫感は「掏摸」から引き継いでいる。中村は朝日新聞の取材に「善と悪は表裏一体。人間は善だけでは生きられない。人が隠している部分を書きたい」と述べている。もしこの言葉が正しいのなら、木崎は我々の一部分ということになる。運命とは何か?この作品で誰か救われる?

2019/03/04

パトラッシュ

悪が魅力的なほど文学は面白い。では木崎は魅力ある悪役かと聞かれたら素直には頷けない。やっていることは確かに悪だが「退屈だから悪いことをしている」という彼の悪の哲学はいかにも陳腐だ。『掏摸』や今作での悪行がそれほど格好よいものでないのも一因だが、どちらも木崎と偶然関わった裏社会に生きる下っ端の目から見た姿を描いているため隔靴掻痒の感が拭えない。『デスノート』のライトのように確固たる意志を持って犯罪に生涯を捧げた巨人に比べ、つくりものめいたキャラなのだ。作者は木崎の生涯を主題とした作品は書けないのではないか。

2021/04/02

Yunemo

よくあることだけど、「掏摸」の兄妹篇ということに気付いたのは読了後。なんだか裏テーマがあって難しい、でもあくまでも自身の解釈で。どうあがいても、世界には富む者が富み続けるという構図は、弱みという情報を握ることによって存在してしまう。この世界に起こることに、いちいち理由なんかない。いろいろ書き記されてるけど、結局は表の世界は裏のシナリオで動くもの。また、根源はそれぞれが持つ宗教観。その狭間で翻弄されてしまう不幸さ、でも生き続けなきゃ。裏の世界で生き続けなければ。やっぱり、理解しがたいまま読了というのが本音。

2015/05/18

のり

「掏摸」読了後、時は空いたが気になって手にした。ユリカは知り合いの子供の入院費用を入手する為に、闇の世界に足を踏み入れる事に…容姿を武器に「矢田」から仕事を斡旋されるが、あの化け物の「木崎」と接触してしまう。常に注意深く行動していたが、悪魔的な存在の二人(組織)の間で板挟みになり、命の保証は全くなくなる。生への執着に目覚めたのは、ユリカにとって大事な事だ。それと、忠告を与えたのは西村なのか?無事生き延びたのか?

2018/04/30

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