クリュセの魚 (河出文庫 あ 20-5)
クリュセの魚 (河出文庫 あ 20-5) / 感想・レビュー
優希
面白かったです。設定は純粋なSFながら、そこに恋愛が絡んでくるストーリー。人類が火星へと散った時代、日本人の生き残りである彰人と麻理沙の出会いはまさにボーイ・ミッツ・ガール。互いに惹かれ合いながらもすれ違う2人がもどかしかったです。その背景にあるのが戦争を迎えようとする時代。彰人が選ぶ運命についていこうとする麻理沙、歴史の動き。その描写はSFファンにはシンプルながらも愛着がわくような気がします。SFに慣れてない人でも読みやすい。SFの味わいと恋愛のロマンスのバランスが絶妙でした。
2016/09/05
ころこ
本書は著者の哲学の実践である。正確にいうと、著者の元々好きなことの理論的裏付けが哲学であり、著者が哲学以前の原点に戻って単に好きなことをした、というのが本書だという関係になる。デリダを使って展開した「エクリチュール」は、意味と意味以前の間、イメージとシンボルの間にある存在だ。「大きな物語」が機能しなくなったポストモダン的状況において、「エクリチュール」は象徴機能が失効しても、なおこの世界に存在し続ける「何か」である。哲学のテクストでは直接指し示すことが出来ないが、その「何か」は物語以前のある塊としてある。
2020/04/09
イツキ
日本という国がなくなって一世紀以上経った火星を舞台に日本という繋がりから始まる恋物語であり、個というものを持たない地球外知性と個を重視する地球人類のファーストコンタクトものでもありました。個人的にはSF部分よりもぎこちなくお互いを思いやる主人公二人の恋愛部分がとても印象に残りました。
2020/05/08
baboocon
オフ会で借りた本。あまりこういうSF小説は読まないけれど、面白かった。数百年も未来の火星と地球の物語。聞き慣れない未来の技術用語がポンポン飛び出してほとんど説明されないけれど、それがかえって想像力をかき立てる。火星に入植して百年以上、距離的な制約により地球の支配を受けず独自の文化を築いた火星がワープホールの発見によりその自治を脅かされる・・・という構図。未来の惑星間を舞台にしてはいるものの、入植民とその祖国との対立というのは歴史を振り返っても繰り返されているよなと。
2018/04/22
なしかれー
家族愛の話。東さんの作品は初めて。東さんに対する私の認識は、頭がとっても良いオタク(良い意味で。もちろん。)だったけど、ここまで愛を語られるとは思ってもみなくてなんだかびっくりしてしまった。色々考えていた筈なのに、飛さんの解説がパワフルすぎて、参りました。。というしかない。
2017/02/16
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