あの蝶は、蝶に似ている (河出文庫 ふ 4-9)
あの蝶は、蝶に似ている (河出文庫 ふ 4-9) / 感想・レビュー
優希
光と闇の狭間をふわふわとしている感覚でした。重さがありながらも、その世界観は心地よいのが不思議です。狂っているのは世界なのか自分なのか。興味深い哲学ですね。
2020/12/15
100
新たな代表作との触れ込みの本作、題名でもある本文の一節が象徴するのは、狂気か哲学か。観察と思考、科学と芸術、詩と小説、境界を失いながらも小説に留まる思索は物語に興味がなくなった小説家の木っ端の眷属。
2024/03/24
hit4papa
鎌倉にあばら屋住う主人公の作家は、作家としての本分から隔たり感じています。そんな主人公の夢かな、現かなの日々が描かれた作品です。静寂と喧騒、過去と現在聖と俗が渾然となった克明な描写が続き、同調するとざわざわとした気分に陥ります。本作品が、語るべきストーリーを持ち合わせていないのは、主人公が物語に興味を失った作家であることを、そのままに著しているようです。土蜘蛛や黒揚羽蝶を象徴的に用い、幽玄の世界を垣間見させるのも泉鏡花を彷彿させて好み。反面、必要以上にまわりくどさを感じるシーンは、少々疲れました。
2020/10/31
南雲吾朗
屍の蔵と書いて鎌倉。どこを歩いても現実の軸が狂うような磁場ばかりで霊所だらけ。その鎌倉の深い闇に徐々に飲まれていく様が日常を通して描かれている。井戸の蓋の裂け目と浴室の天井の割れ目を出入りする土蜘蛛。拒食症自殺者の女。夜になると幽冥な闇に変わる竹林。シトシト降る雨の円覚寺山門。渋谷の千代田稲荷。幻想的というには、あまりにも生々しく突き放したような描写。所々に黒揚羽蝶が出てくる。幻想の世界と蝶というのは、万人に共通した感覚なのだろうか…?(続く)
2018/10/01
ω
藤沢周先生、初読み。 人を楽しませる作品ではないと思う、哲学的?というのが正しいのか、ストーリーはあるようでないようなω。 正直、しんどかったです。しつこいくらいの描写にまた、理解が及ばない。藤沢先生の行き着いたところでしょうか。 ただ、他に似てる作家さんが思いつかない独創性に溢れていて感服でしたω 何だか力強かった。
2018/11/22
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