日本の悪霊 (河出文庫 た 13-18)
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日本の悪霊 (河出文庫 た 13-18) / 感想・レビュー
榊原 香織
ロシアのスタブローギンが日本版になるとコーンなに矮小化して汚物まみれになるのか。 三島由紀夫より華麗なくらいな言葉遣い。やっぱり天才、高橋和己。 暗いなー、救いようないなー。 スタブローギンは悪魔的美しさだったけどなー。 60年代学生闘争 史実の横川事件がもと
2023/05/19
おたま
1960年代の前半頃、村瀬狷輔は小さな強盗とも言えぬ強盗事件で逮捕される。刑事の落合は、自分と同じ大学の後輩にあたる村瀬の事件に疑念をもち、その過去を調べ始める。村瀬の回想と、落合の調査によって、次第に過去に起こった山林地主にして銀行理事の殺害事件との繋がりが明らかになってくる。さらにそこには暴力的に革命状況を作り出そうとする組織が関わっていたようなのだ。あたかもミステリー小説のようにして展開していく思想小説であり、高橋和巳の思念が充満した小説である。
2023/10/18
風に吹かれて
何とも言えない生々しさと諦念を感じた。安保闘争下の60年代ではない現代においてもリアルな物語だ。あまり考えたことはなかったが、罪と罰は権力が望むか望まないかによって決まる、ということを頭の片隅におくことで理解できることが少なくないように思う。現代ではマスコミを使って行われることが多いようだ。ある事柄を某局は何故扱わないのだろうか、とか、何故そんなことがこのタイミングで週刊誌で大きく扱われるのだろうか等と思うことが多い。影で日本の悪霊がほくそ笑んでいるに違いない。
2017/09/10
ゆ
辞書が手放せない作品ではあったが、読みやすく、内容も作者の想いも絶望も胸に響いた。国家も事件の裏切り者も、顔も出さずに息を殺して嘲笑っているのだ。その奴らに対する憎悪、怒りについて落合や村瀬に共感してしまう。顔の見せぬ奸策の為に無罪とされる村瀬。彼の過去を全て否定し、裁きも与えないことの怖ろしさが濁った暗い翳を植え付けてくる。
2022/10/10
ぽりま
自分にとって三作目となる高橋和巳作品。強盗犯と刑事という対極にある立場の二人だが、事件の解明が進むにつれ、心を通わせていく。正義と権力は異なるものだ。正義を貫くはずの警察。だが、その組織を見れば渦巻く権力が正義を歪めている事実。「『正義』を唱えれば問題が解決するなんて、世の中は生易しいもんじゃない。大人になって現実的な振る舞いをしなければ何も進まない。」と、自分のかつての上司はそう言ってたな。たしかにそうなのかもしれないが、現実的になって魂を枯らすよりも自分の中の正義を貫く生き方をしたいなと思う。
2019/03/01
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