妖櫻記 上 (河出文庫)
妖櫻記 上 (河出文庫) / 感想・レビュー
geshi
皆川博子作品で桜で伝奇なのでハードル高くしすぎたかな。ドップリ感はそれほどではなく、とても読みやすい文章でスラスラいける。怪異をギリギリ現実にもありうる形で出しているため、やや外連味に欠ける印象。それでも下地としたフィクションの緯糸と史実のリアルの経糸を織り重ね、どこまでが現実でどこからが虚構か分からない一つの絢爛豪華な物語に仕立ててしまうのは流石。室町時代の動乱の中で生まれ流転する愛憎劇をエンターテインメントとして読ませる皆川作品らしいストーリーテリング。
2018/03/09
まさ
応仁の乱へと向かう室町時代。ただでさえ猜疑と裏切りに満ちる混沌とした世界なのに、皆川さんは奇怪な傀儡など異形を盛り込んできた。赤松満祐の妾・野分とその娘桜姫、そこに玉琴、兵藤太、山吹、蝦蟇丸、阿麻丸、百合王…と幾重にも絡んでくる。妖しい世界観は耽美な世界にもつながる。登場人物同様、幻を見ているのか、不明瞭な世界に誘われた。 時折、"解説"が入るのは皆川さんが現実に引き戻してくれているのかな。下巻へ。
2021/08/09
ゆう
男女貴賎問わずいかがわしい人物のオンパレードなので、最初胃もたれがして読み進まなかったが、中盤あたり(上巻の)から慣れてきたのか物語に引き込まれた。荒唐無稽とも言える展開なのに説得力を感じてしまうのは時代を室町に持ってきてるからか、筆力が凄いのか。期待しながら下巻へ…
2020/03/22
真理そら
最近クローズアップされている応仁の乱の少し前の話。野分の女らしい執着や阿麻丸の鬱々とした虚無感が丁寧に描かれているので伝奇物風味は薄い。南北朝から応仁の乱あたりの歴史に弱いので作者に振り回されながら年表片手に上巻を読み終えた。
2017/10/06
春の夕
無道な行為は人の貪汚さを際立たせ、瞋恚に燃える様に焦燥感を抱かされ、惆悵としてひとりその人を憶うことを止まない。醜くもしぶとくも生へ執着する姿には憧憬を食らわされ、薄幸な生を背負って生きている様は庇護欲を沸かせる。人は生死違わず美醜変わらず、ひとつひとつ知る限り、何かしかの感情を生じさせる力があり、その大きな力には畏怖するけれども目を奪われて仕様がなかった。
2022/02/11
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