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我が心は石にあらず (河出文庫 た 13-19)

我が心は石にあらず (河出文庫 た 13-19)

我が心は石にあらず (河出文庫 た 13-19)

作家
高橋和巳
出版社
河出書房新社
発売日
2017-08-08
ISBN
9784309415567
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我が心は石にあらず (河出文庫 た 13-19) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

主人公の進藤誠の回想記の形式を取る。すなわち全てが終わった時点にこの手記が起筆されたのであり、そこに流れるのは諦念に包まれた悲哀の感情である。彼は宮崎精機の組合の執行委員長であるばかりか、地域の企業組合連合体の理論的支柱であり、指導者であった。「党」とは明確に一線を画し、科学的アナーキズム、もしくはある種のサンディカリズムが彼のよって立つところであった。地域主義が持つ理想と偏狭な現実、資本の論理や力と労働者の結集、彼はそうしたインテリゲンチャの苦悩を一身に背負う。そんな彼が「個」に立ち返る湊が⇒

2022/04/13

おたま

大学生の頃か、卒業後すぐぐらいに読んで以来、数十年ぶりの再読となる。地方都市の精密機械会社に勤務する研究員の<私>=信藤誠。彼はこの地方都市の商工会議所が後援する奨学金制度の第一回奨学生であり、苦学の末宮崎精機に勤務することになった、この都市のエリートである。彼等奨学生の作る「銅の会」の会長でもある。また、彼は大学在学中に、工学だけではなく広く人文社会科学系の知識も身に着け、地域労働組合連絡協議会の委員長ともなる。信藤誠の「理念=科学的無政府主義」を実現すべく、組合活動にも精力的に取り組んできた。

2022/11/12

風に吹かれて

高橋和巳は苦悩党の人だ。「邪宗門」や「憂鬱なる党派」など、主人公は、希求する社会と自身の生の在り様を具体的な活動で目指すが、苦悩の中で挫折する。きっと、もっと楽な、政治的なものに関わらない生き方があると思うが、自身のすべてを社会にコミットさせる。そういった生の隙間に柔らかく入り込む恋情。社会的活動が「公」とすれば、それは「私」。不器用な主人公は、両立させることはできない。50年前の時代の主人公。今では古い人間かも知れない。でも、その不器用さは、心に残る。

2017/11/30

技師であり社長の旧友でもある主人公が労働組合側として闘争する彼の行動と認識。学生と教授会の板挟みになった、高橋先生自身の煩悶をそのまま投影したような印象。論理的に全てをやろうとしても、精神というものは抑え込むことができない。学生の頃から常々思っていたことを言い当ててもらった。

2021/06/13

ザビ

地方の労働組合を束ねながら、一方で不倫に耽りつつ家族にバレないよう気を揉んだり組織の体裁を気にしたり。主人公は組合トップの志ある自分と普段の俗的な自分とのギャップに終始葛藤しながら、ラストの労使交渉で組織をまとめきれずついに地位を転落する。不倫にハマるくらい平和な日常の中でも「科学的無政府主義」の志は貫けるのか……そんな自分の中の矛盾と向き合う物語と感じた。それにしても「この地方を一種の解放区一種のソビエトにしよう」みたいな思想……左派硬質な文章も含め決して好みじゃないけど何か残る。何故だろ?

2017/10/17

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