太宰よ! 45人の追悼文集: さよならの言葉にかえて (河出文庫 か 0-10)
太宰よ! 45人の追悼文集: さよならの言葉にかえて (河出文庫 か 0-10) / 感想・レビュー
ケイ
悪目立ちする安吾の「不良少年とキリスト」。ツラいだろうが、残念だろうが、誰の命も等しく尊くはないですか? 井伏さんのも、周りに気を使っての感がどうにも。その点、文壇仲間でも少し距離がある人や、津軽の頃からの知り合いは、ただ死を悼むから、私も同調する。百間先生は、本当に人がよろしく、こういう時にも湿っぽくならないね。もっと書かねばならなかった、文学を追求する途上で…と当時は思われたのだろうが、果たして人間失格より文学として底の深い作品を書けただろうか。どっちにしても、身体はもうボロボロだったのだ。
2020/06/19
青蓮
太宰と親交のあった作家45人から精選された、哀悼の辞や作家論、作品論、人物評等を纏めた作品。太宰治はその振る舞いで周りにいた人達に多大な迷惑をかけた故に煮え湯を飲まされた人も一人や二人ではないだろう。でもそんな彼をやっぱり放って置けないと支えた沢山の仲間、慕う友人がいた。太宰治と言う人は朗らかで優しくて純粋で寂しやがり屋で愛する事に酷く不器用で悲しい人。彼を想う人達は皆それを解っていたし彼の非凡な才能、作品を愛した。遺された者は遣り切れないながらも太宰があらゆる苦悩から解放された事には安堵したと思う。
2018/06/07
ねこさん
日々、力を尽くせと我に課している。人前では、臆することなく十分に快活にあろう。おそらく。然し見得を切って弁じた後には大変に疲弊しているので、フラフラ歩いて、可憐な司書のいる図書館へ歩いて行く。太宰を彼女の手から借りたくなる。太宰に惹かれている。或いはサッちゃんに。内部の退廃を口にせず、口にしないことをひっくるめてどこかへ身体を預けたくなる。褒められもせず、眠りたい。そういった、欲と呼ぶにはあまりに本意ではない堕落が、おかしみを生み出している。我が生にもおかしみはあるだろうか。もし、なかったら、すみません。
2021/04/08
まゆまゆ
太宰の入水の報せを受けた友人や先輩、弟子など45人が寄せた追悼文を集めたアンソロジー。悲しみや後悔や…どんなに言葉を紡いでも語り尽くせない思いが詰まっています。暗くてとっつきにくそうなイメージを持たれがちですが、明るくてユーモアたっぷりで人を楽しませる1面もあった太宰(それが彼の心を蝕んでいたのかもしれませんが)。多分彼自身が思っている以上に色んな人に思われていた事が分かる1冊です。その事を太宰は気づいてたんだろうか。110回目の桜桃忌を、天国からハニカミながら見ていてくれたらいいですね。
2019/06/19
かもめ通信
太宰治、没後70年を記念して出版されたアンソロジー。といっても、収録されているのは太宰の作品ではなく、太宰入水の報せを受けた哀悼の辞をはじめ、同時代の作家や評論家、編集者、友人など45人の追悼・追想文が収録されている。 井伏、安吾、檀、田中英光などおなじみの面々はもちろん、面識はなかったという人をも含め様々な人が様々な立場から太宰について語っていて興味深い。これだけ沢山の視点から語られる「太宰」を続けて読むと一つ一つの文章を読んだときには見えてこなかったあれこれが見えたような気がして面白かった。
2018/06/19
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