寝ても覚めても: 増補新版 (河出文庫 し 6-7)
寝ても覚めても: 増補新版 (河出文庫 し 6-7) / 感想・レビュー
ケンイチミズバ
大事な人をそして大事な人も含めた周囲を傷つけた認識が欠落してる。わがままにも程があるが、呆れた自分本意は恋とか恋愛ではよくあることなのだけれど。この女性の場合、無表情な語り口が怖いし、壊れてる?ともとれた。カメラ女子がファインダーから見た目線で綴る街や人や空模様は「のようなもの」で街をぶらつく落語家のしんととちゃんを思い出した。心象風景がたくさんあって物語はすかすかで。ただし、この恋愛は写真に添えたコメントみたいな捉え方がよいのかも。そう、だから映画なんだろう。こんなに魅力のないヒロインは初めてだなあ。
2018/09/25
hiro
柴崎さんの小説は、ドラマチックな展開がない日常を描いた小説を読んできたが、今回は映画化された“異形の恋愛”がテーマのこの作品を読んでみることにした。そして読み終えてすぐにDVDを借りて映画もみたが、あくまでも朝子が主人公の小説に比べ、亮平目線が多い映画と、映画の脚色によって大分見方が違った。異形の恋愛と言っても、男女問わず未練が残る人と生き写しの人に出会えば、心をかき乱されて当然だろう。ましてや朝子にとっては自分の元から黙って消えた麦。その麦が現れるという、今までにないドラマチックな展開が待っていた。
2019/04/28
佐島楓
何か、もしくは誰かを所有したいという欲望。他人を傷つけてでも、自分の一番欲しいものを優先する身勝手さ。主人公は、そんな感情に忠実であるように見える。少し狂気を感じるほどに。でも、誰しもがそんなところを持ち合わせているとも思う。欲しくても手に入れられないもののほうが、圧倒的に多いのだから。
2018/06/20
コットン
情景描写が多くストレートで無いので読む人を選ぶ作品で、読むのに時間がかかるが後半は加速する感じ。
2024/01/21
りつこ
恋愛の空気感を写実的に描くとこんな風になるのかな。朝子が麦に初めて会ったとき。長い手足、低い声、そして自分に向けられた笑顔。花火の火花が散ったのは幻想なのか比喩なのか。一方的だけど完璧な「恋」。自分があるようでないような朝子はもともとそういう人間だったのか麦との恋愛でそうなってしまったのかは不明だが、亮平にとっての朝子は朝子にとっての麦だったのか、あるいはもう少しリアルだったのか。後ろめたさを感じるくらい麦と亮平が同じ顔に見えていた朝子が、麦を見て「違う」と気づく瞬間。わかる気がする。映画も見てみたいな。
2019/01/08
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