いやしい鳥 (河出文庫 ふ 18-1)
いやしい鳥 (河出文庫 ふ 18-1) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
表題作を含む2つの中篇と1つの短篇を収録。「いやしい鳥」は、著者のデビュー作であるらしい。そのシュールな趣きは時空を隔てた安部公房の後継者であるかのようにも見える。もっとも、似ているところもあれば、そうでないところも。安部公房の小説が持っていた飄々とした趣きと偏執的な感覚は共通するような、そうでもないようなだ。ただ虚構世界の細部に宿るリアリティという点では相通性を持つように思う。併録の「溶けない」と「胡蝶蘭」も、共に世界の裏側を覗き見るような小説だが、幾分図式的な感がなくもない。将来性は有望か。
2019/11/12
優希
グロテスクで残酷でありながら美しい。淡々とした世界観が怖さを誘うのですね。
2022/01/19
エドワード
怖い怖い。大学生が講師の飼い鳥を食べたために、自分が鳥になってしまう話。母親から「早く寝ないと恐竜に食べられちゃうんだから」と脅かされた少女が、恐竜に食べられる母親を見る話。胡蝶蘭と話す女の話。静かに始まり急展開する現代の夢物語、能楽のようだ。藤野さんのホラー話は日本人のDNAが色濃くにじみ出ていると感じる。江國香織さんが解説で「藤野さんの作品は幾つもの意味でおそろしい。」と書いているが全くそのとおりだね。一ページ全部文字って言うのも相当読みにくいんですけど、意図してそうされてるんだよね。
2021/06/01
小夜風
【所蔵】これが藤野さんのデビュー作とのこと。3編とも訳が判らなくてとっても面白かったです。どの話も完全に向こう側に行ってしまっている人と、こちら側から傍観している人との噛み合わない会話が滑稽で、気持ち悪くて焦れったくなりました。ありえない話の中にもリアルな肌触りがあることで、今日にも自分の身にも同じことが起こるんじゃないかと錯覚しそうになりました。読みながらついついこれは何かの比喩なのかなとか、本当は何があったんだろうと意味を見出そうとしてしまうのですが、そのまま素直にこの世界観を楽しむのが良いのかなと。
2019/05/14
ぱなま(さなぎ)
藤野さんのあやつる日本語は巧み。この文章がわたしの母語で書かれていることを実感すると同時に、わたしの普段扱っている言葉と同じ日本語であるのが不思議だとも感じる。初めてことばを与えられた人のように、名前があるとも知らなかった事象にことばが与えられていく愉悦に浸る。そこに、闇へ分け入るようなスリルと恐怖があるのは自然なことのように思える。
2019/05/11
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