シメール (河出文庫 は 24-2)
シメール (河出文庫 は 24-2) / 感想・レビュー
ちょろこ
ゴシックサスペンス、の一冊。美少年とその美少年に心奪われた美術評論家のおじさまを軸に展開される物語。幻想的な雰囲気にすっぽり包まれたかのような、服部作品の耽美な世界、まさにゴシックサスペンスなるものをたっぷり味わえた。少年に心奪われ、かき乱される心はどことなく狂気を感じつつも芸術的表現に置き換えられ美しさを纏い絡みつく。永遠に歯車の合わないかのような数々の思い、行き場をなくしたかのような思いは何をもたらしどこへ向かうのか…。読了後もシメールが心に木霊する。
2019/02/14
青蓮
満開の桜の下、美少年に魅せられた美術評論家の片桐。彼の美しさを愛し、手に入れたいと渇望する片桐は少年とその家族の運命を狂わせていく。愛憎渦巻く物語は意外な結末へ。物語に登場する様々な古今東西の芸術作品の演出がこの作品に頽廃的な色を添えていて大変美味でございました。作中に登場する片桐が私の中では澁澤龍彦で再生されます。モデルはやはり彼なのかな。服部まゆみさんの作風は好みなので他の作品も復刊して欲しいです。
2019/01/15
mii22.
作品全体から醸し出す現実離れした幻をみるような不確かさやあやふやさがとても魅力的。完璧な悲劇の物語を彩る浮世離れした登場人物の美しさと醜さと儚さがゴシックサスペンスにピタリとはまりシメールの耽美な世界を作り出している。美貌の少年に心を奪われる美大教授と不運に見舞われた少年親子とのすれ違った感情のもつれがもたらす悲劇。歪んだ愛情は狂気を帯び、献身的な愛情は報われない。なかでも木原氏がひたすら可哀想でならなかった。個人的に双子をモチーフに使っているところが好みでよりこの作品を楽しめた。
2019/09/24
コットン
肆ノ壱貳參さんの【感想・レビュー】で知りました。正直『この闇と光』が面白く、凝った作りでもあったのでそれと比較すると-少し残念かな-とも思うが、読ませ&楽しませてくれる。私的には翔とバード達との交流を覗き見るまたは写真を撮っている時の片桐さんの状況や心理描写とかがあればもっと面白かったかもしれないと感じた。
2019/03/07
優希
完璧な美しさを持つ作品だと思いました。精霊にも見える少年。孤独。陶酔の迷宮。悲痛な狂気。全てが詰まっています。究極のゴシック・サスペンスの輝きを感じました。
2020/12/01
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