法水麟太郎全短篇 (河出文庫 お 18-5)
法水麟太郎全短篇 (河出文庫 お 18-5) / 感想・レビュー
HANA
どの作品も『黒死館殺人事件』じみたペダントリーに満ち満ちていて、読んでいて嬉しいのだが非常に厄介。一応ミステリに分類されるのであるが、トリックがどれも形而上学的というか、それが著者独特の呪言じみた文体と相まって一種異様な独特の世界観を醸し出している。論理もある一点を超えると超論理的になるわけで。そこが寺社であろうと白系露西亜軍の聖堂であろうと病院であろうと、この地上ではない異界に作り替えられるのはやはり言語の魔術だよなあ。あと言葉だけではなく双生児や死蝋の作成、人体実験と内容もやはり悪夢じみておりました。
2019/11/13
おにく
日本三大奇書の一つ“黒死館殺人事件”に登場する法水麟太郎の短編が発表順に収録されています。彼は、前捜査局長で一流の捜査弁護士という肩書きで、薬学や多くの信仰に精通し、想像を越えた難事件を解決してゆきます。難解な文章で、初読はサッパリですが、何度も読み返して、トリックが頭の中で動きだす様は快感です。これらの短編を挟んで、長編“黒死館殺人事件”が書かれるのですけど、黒死館の以前と後では、人物の描き方など、明らかに作者の力量が上がっていて、そうした変遷を感じられる短編集でした。
2024/05/31
那由多
難しい。犯行動機やトリックに、被害者の心理状況、肝心な部分ばかり解りづらい。短編でこの難解さなら、黒死館殺人事件なんて無理だわ。手出しはすまいと決めました。『聖アレキセイ寺院の惨劇』『オフィリヤ殺し』は比較的解りやすく、舞台設定なども良く面白かった。
2021/12/28
TKK
法水麟太郎ものの短編集。黒死館殺人事件でみせた気が狂うような衒学的推理は、短編のためか多少わかりやすくなりました。事件を解くことが命で、犯人や被害者自体にさほど関心を示さないところが、らしくて好きです。高慢ちきちき最高!年代順に並べられてますが、やっぱり狭い空間が好きなので、前半の数編が好きです。
2019/08/05
Kotaro Nagai
本日読了。黒死館殺人事件で活躍した名探偵の短篇全集。初登場の「後光殺人事件」(昭和8年)から「国なき人々」(昭和12年)まで10作品を収録。密室ミステリーの「後光殺人事件」「夢殿殺人事件」「失楽園殺人事件」あたりはいかにもペダンチックで幻惑的な小栗作品の典型となっている。そこには、「そんなのあり?」というような法水しかわかり得ない独特の論法が展開され、ワトソン役の支倉検事でなくてもついて行くのが大変。でも、その反面不思議と魅了され、捨てがたい魅力がある。そんな小栗作品を楽しめる作品集となっている。
2019/07/11
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