逆さに吊るされた男 (河出文庫 た 48-1)
逆さに吊るされた男 (河出文庫 た 48-1) / 感想・レビュー
meow3
オウム真理教の林泰男死刑囚との対話から生まれた作品。確かに田口ランディはスピリチュアルという言葉が出回る前から精神世界に傾倒していたからオウムに興味を抱くのも分かる。主人公がオウムに深入りしていくのにハラハラした。そして話した限りではどうみても犯罪を起こすような人ではない人達が結果的にあのような事件を起こしたという得体のしれなさ。自分でも悪いことと分かっているのに逃げられなくなっていく過程が怖かった。
2022/05/31
ロロノア・ゾロ
一言『オウム真理教は何だったのか!』地下鉄サリン実行犯で死刑囚・林泰男の交流者となった作家を描いた作品。実体験をもとに描いた本書はフィクションではあるが、なかなかの衝撃作である。執行を経てのあとがきは意味深いものとなっている。記憶にある「地下鉄サリン事件」は本当に衝撃だった。世の中、どうなっていくのか世間を騒がせたテロ行為。25年以上が経ち、皆の記憶が薄らぐ中、改めて考えさせられた。強烈な麻原彰晃にどれだけの能力があったのか⁉︎何故、高学歴の信者が殺人者になってしまったのか⁉︎未だに自分には理解できない。
2021/03/14
ライム
宗教と心の闇の関係的な部分を考察するのではなく、著者自らが行動し、ゴジラやナウシカとの共通点で勝手に盛り上がり、数字のこじつけで興奮する、はたまた富士山麓サティアン跡地巡りなどのズレてゆく言動が非常に面白く、この事件を扱うのに個人的に正解な対処と思いました。崇高な目標を持っていたのに、状況に巻き込まれて不条理に脱線してゆく感じと重なる。不平等さに絶望したって私達はこの世界の繋がりの中で生きてるし逃れられない。「言い訳でもいいから言葉にして」に共感
2024/07/20
Shinobi Nao
私が思うに、オウムにいた人たちは、大人になってから(もしかしたらそれ以前から)なかなか「仲間」と思える人に出会えなかったのが、同じ教団にいるだけで共通の信念を持ち共通の目的を目指す人たちと深く関係を築ける、そういうところにものすごい居心地の良さ、もっといえば快楽を感じていたのではないだろうか。つまり、孤独だった。そして、今は孤独ではない。修行は大変でも、仲間と繋がっているという甘美が勝る。教団の方向性がだんだんとおかしな方に変っていっても、見逃してしまうほどに。
2023/07/08
Janjelijohn
理不尽な目にあった時、目を背けたくなるような事実を知った時、圧倒的な現実に押し潰されそうな時、私は「意味」を見いだそうとすると思う。意味などなくても、必死にそれにすがりつこうとする。それから見たいものだけをみて、信じたいものだけを信じる信者になっていくのだと思う。 林泰男元死刑囚との交流を通じて描かれたノンフィクションノベルだが、懺悔も混乱も、恐れも羞恥も悲しみも描かれていて自分の上に降ってかかってきた。その心情に思いを巡らせるとオウム信者とは何かということが少し理解できた気がする。
2022/10/18
感想・レビューをもっと見る