JR高田馬場駅戸山口 (河出文庫)
JR高田馬場駅戸山口 (河出文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
いくつもの視点と語りを内包する小説である。まず「女は…」と客観体で物語を紡いでゆく第三者の視点。女との間に共通の像を結ぶことのない他者たちの声。女自身の一人称的な視点。その中に内在し戯画的に立ち現れる「忍者ハットリくん」。旧陸軍戸山学校に代表される「地の霊」。幼稚園年少組の一子ゆたかの安全を何よりも優先する「女」はこうした強迫観念と混沌の中にいてひたすらに深い孤独の中にある。「女」にはもはや向かうべき行き先がない。あるいは初めからすべてを喪失していたのであったか。絶望するべき望みさえもなかったのである。
2021/08/24
starbro
柳 美里は、新作中心に読んでいる作家です。「山手線シリーズ」第三弾、本書はモンスターマザーが主人公のファンキーでアナーキーな怪作でした。しかし忍者ハットリくんと731部隊が登場するとは思いませんでした。 本日、仕事でJR高田馬場駅を通過しました(笑) https://web.kawade.co.jp/bunko/11254/
2021/04/21
やいっち
本作の語り手は、意識高い系の主婦。旦那は単身赴任。浮気している(と彼女は睨んでる)。子供を私立の幼稚園に。が、食事の際、子供たちを正座させることを入園させてから知って愕然とする。 幼い子を正座させたら膝を悪くする。脚が格好悪なる、と主婦は思ってる。知ってたら入園させなかったのに。あとの祭りである。園に抗議する。専門家や医者らに意見を求め止めさせようとするが、神道系の園側も頑固で主婦に受け入れさせようとするばかり。嫌ならやめて、である。園側からしたら、主婦はクレイマーと受け止めているかもしれない。
2021/04/30
fwhd8325
3.11後、主人公のような方はたくさんいたのだと思います。近くにいられたら困るけれど、山手線シリーズの中では一番わかりやすい作品だと思いました。だけど、もうこのシリーズはいいかなと思います。苦しいです。
2022/07/13
優希
しんどかったです。社会からの疎外感、圧迫感がリアルで苦しくなりました。自分個人であれば自分で守れば良いのですが、子供がいると子供優先になってしまうのは当然のことと思います。心を閉ざすべきか、守るものを守るべきか難しいところですね。
2022/01/24
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