禁忌習俗事典: タブーの民俗学手帳 (河出文庫)
禁忌習俗事典: タブーの民俗学手帳 (河出文庫) / 感想・レビュー
ムッネニーク
81冊目『禁忌習俗事典 タブーの民俗学手帳』(柳田国男 著、2021年3月、河出書房新社) 民俗学の父・柳田国男が1938年に刊行した『禁忌習俗語彙』を改題、新字新仮名としたもの。 キャッチーな書名からは想像もつかないほどに難解で、その上文体が古いのでとにかく読みづらい。 本書に収められている習俗は、今では失われてしまったものがほとんど。それを後世に伝えた柳田の功績は大きい。 〈忌を厳守する者の法則にも、外から憚って近づかぬものと、内に在って警戒して、全ての忌で無いものを排除せんとする場合とがある〉
2023/09/11
里愛乍
事典と銘打っているだけあって、あらゆる禁忌タブーとされる民俗学手帳、忌のしきたりや意味もだけど、言葉そのものが何というか、もう強烈である。例えばツキタテ、セツバタ、ナツキト、カンバリ等こうしてカタカナで並べてみるだけでもおどろおどろしくないですか?文字としてもそうだけど音で聞くのも相当なもの。あと死を連想されるのか血がやたら忌み嫌われてる。喪が不浄なれば産も穢。世の昔から女が蔑まされてきたのは畏れからではないのか。だって毎月血を流すんですもの。
2022/08/28
耳クソ
収録されているほとんどが、なぜ禁忌なのか、なぜ穢れているのかという発生源が書かれているわけでもなければ、禁を破ったらどうなるかが詳しく書かれていないものも多い。ただその些細な現象が禁となり「常」になる。それはある出来事が起こったその要因を当事者の行為や過去の状況で説明するためか、あるいはこれから起こす出来事の口実として設定されているのか、いずれにせよ、それが「常」の制度と化して人々の生活に入りこんでは衰えていく様は俯瞰できる。たとえば就活ルールなんかをありがたがる大バカ共にはこういう昔話を読ませるといい。
2021/12/29
テツ
柳田国男が収集した本邦における忌むべきこと、避けるべきことの数々。刊行された昭和13年の時点で既に消え去りつつあった忌み事の数々は、現代社会においてはリアリティがないけれど、どんなに馬鹿らしく思える禁忌であろうと、そこには必ず忌まわしさの理由が存在したのだと思えば、わざわざ踏み抜こうとはしないよな。女性の月経を始めとした噴飯物のケガレを肯定しようとも事実ケガレているとも感じないが、それも血に対する感覚から生じた忌まわしさであるのなら、そこに至る経緯は理解できる気もする。生と死の境界に対する畏れ。
2022/04/14
つちっち
昭和十三年当時でも失われつつあり、しかも特定の地方のみでだったりだから、ほぼ知らない言葉ばかりでした。しかし、字面から受ける不気味さとか、ひらがなで読んだ時は伊智さんのタイトルにありそうな、得体の知れない怖さがあります。日本的な差別意識の根源にある「忌」はなくなりつつあるけど、終わりの「改題」を読んでいると『日本残酷物語』さながらで、やっぱり今のがいいなあと思います。
2022/04/14
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