外道忍法帖: 山田風太郎傑作選 忍法篇 (河出文庫)
外道忍法帖: 山田風太郎傑作選 忍法篇 (河出文庫) / 感想・レビュー
geshi
財宝を巡る計45人の三つ巴の忍法バトル。戦いへのお膳立てを前半3分の1で行い、後は次々と忍者が現れては奇想天外な忍法を使い消えていくのを繰り返す「来た・使った・死んだ」の圧倒的スピード感で押し流す。キャラの書き分けや攻防をかなぐり捨てて、数で勝負するのは潔いと言うべきか無茶と言うべきか。明らかに数合わせなキャラもいるし頁数からするとバランス悪いことは重々承知の上で、やりたかったことをやり通したといったところ。ラストに壮絶な裏切りと愛憎入り混じる決着をつけるのが山風だなぁ。
2021/08/07
8番らーめんR
天正遣欧使節の財宝をめぐり、マリア天姫率いる15人の童貞女、天草党の伊賀忍者15人、由比正雪配下の甲賀忍者15人による3つ巴の壮絶なバトルを描く。編集者「あれはサドですね」山風「いや、あれは長崎だ」サドマゾの倒錯した考えを持つ登場人物たちの思惑で動きだす単なるエログロを超越した世界。舞台が「長崎」という必然を読者にまざまざと思い知らせる衝撃のラスト。作中人物たちの心中を全く描くことなく、秘術を尽くした忍者たちが氷が解けるように壮絶に凄惨に相倒れてゆく様はまさにハードボイルド。R18
2021/10/28
KDS
長崎に眠るという、天正遣欧使節の隠し財宝の在処が記された金の鈴を胎内に持ち、大友忍法を操る十五人の切支丹童女たち。松平伊豆守の命を受けその秘宝を探る天草党伊賀忍者十五人と、財宝奪取を目論む由井正雪配下の甲賀忍者十五人との三つ巴の忍法合戦の火蓋が切って落とされた!なんといっても総勢四十五人を要する忍法バトルの描写が目まぐるしく、あれよあれよというまに伊賀忍者も甲賀忍者も切支丹童女も次々に死んでゆく。スピーディーかつ怒涛の展開に圧倒される一冊だ。ラスト5行の黙示的な一文にも唸らされること必至。傑作!
2021/05/18
まどの一哉
ひさしぶりに読んでみた山田風太郎の忍法帖シリーズ。これはそんなに長編でもないわりに、なんと各々15人ずつの忍者が3党入り乱れての秘術合戦でありいかにも多い。もう物語も後半になるとてきぱきとシステマティックに進行して、忍者も登場して術を披露するやいなや死んでいく。もう少し人数を減らして一人一人丁寧に描いてくれてもよかったかと思うが、これもひとつの実験なのか。
2021/08/01
hirokazu
1996年の講談社ノベルズ版以来、25年ぶりの再読。山風忍法帖最多の45人の忍者が登場。終盤は「出た。戦った。死んだ。」ってな感じが続いて「もうええわ」と思ってたところに、衝撃のラスト。ちなみにこの作品、調べたら「週刊新潮」連載は1961年(60年前!)。遠藤周作氏の「沈黙」が1966年ってえから、こっちの方が早かったんだ!…恐るべし、山田風太郎。…1961年当時は「丸橋忠弥が、江戸城のお濠に石を投げる」シーンの意味がみんな分かってたんだなあ。私は北原白秋の「忠弥」の解説を読んで、やっと分かったんだけど。
2021/06/28
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