奇想版 精神医学事典 (河出文庫)
奇想版 精神医学事典 (河出文庫) / 感想・レビュー
山ろく
いつから読み始めたか忘れてしまったが付箋傍線とともに遂に読破。文庫本で6百頁超。執筆にも10年近く要したという。事典だが語順は連想の流れのままに、神→隠された必然→アトランティックシティー上空の空飛ぶ円盤→ブリキの金魚→家族的無意識→スイスのロビンソン…。とはいえ標榜する精神医学の解説記述も読みやすく、様々な精神疾患が、その症状・診断・治療・患者・歴史沿革など少しずつ様相を変えて繰り返し出てくるので(巻末索引をみると「統合失調症」は最多67回)自ずと知った気になれて心地よい。当面手近なところに置いておく。
2022/10/12
ATS
連想ゲームといった感じで様々なジャンルの話題が次々に出てくる。解説で穂村弘氏が「言葉のびっくり箱」と評しているが言い得て妙であろうと。この本を読まないでいたら死ぬまで知ることのなかった世界(無知の外)があると思うと感慨深いものがある。個人的には詩人の粕谷栄市氏を知ることができたのがよかった。現代詩は読まずにきたので本書を読まなければ知ることなくこの世を去ったのではないかと。筆者は精神科医であり精神医学関連の話題や思い出話なども興味深いものが多かった。しかし本書は合わぬ人には合わないかもしれない笑
2021/09/21
CTC
21年河出文庫(単行本17年同社)。著者は松沢病院ほかで臨床豊富で著書も多い精神科医(6年ほど産科医経験も)。専門分野のことを平易に語ってくれる本は大抵愉しいが、本書は更に事典形式、著者の連想順というのだから、頁を捲る手が止まらない。北杜夫や帚木蓬生のように著述活動をされる精神科医も多く、患者や病院の様子はなんとなく頭の中で像を結んでいるのだが…事実としてはそういうステロタイプが映像化されたドラマなどから摺り込まれている。見知った小説や映画、芸術家などを解題しながら読者の視野を拡げるような良書である。
2024/03/16
豆茶
あとがきによると、ハードカバーで出版された際、多くの書店で医学書の棚に並べられたとか。お堅い専門書だと思って手に取った人の困惑顔が目に浮かぶ…最初の項目『神』に始まり、空飛ぶ円盤から、島尾敏雄の小説へと、連想の赴くままに話題が万華鏡のように移っていくんだから(もちろん、精神医学が話の核ではあります)。博覧というのは確かに。ただ、小説や映画の感想が若干、上から目線だったり、同業者の出したヒット本の評価がけっこう辛辣だったりと、主観を前面に押し出してくるスタイル、ちょっと疲れる…。
2021/09/16
maimai
夜寝られなくなるくらいおもしろい。事典としては役に立たないのは、著者が巻頭早々に断っている通り。見出し語がもっぱら「連想」順で配列されているからだ。例えば、【アンダソン神話】の項目。『ワインズバーグ・オハイオ』のシャーウッド・アンダソンの4日間の失踪(4日後に朦朧状態で発見)を、精神医学上の「解離」症状だったと分析する。「解離」とは、精神的負荷に対応するために自己同一性を放逐することで、アンダソンの場合はその中の「解離性健忘」か「解離性遁走」(フーグ)だったと推測する。(コメント欄に続く)
2022/06/30
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