かか (河出文庫)
かか (河出文庫) / 感想・レビュー
さてさて
『かかを、産んでやりたい、産んでイチから育ててやりたい』という、うーちゃんの心からの思いに胸が締め付けられるこの作品。方言と『かか語』に覆われた文章が気になる感覚が、いつしか『赤』い血を感じる生々しい感覚に上書きされていくのを感じるこの作品。作品冒頭の『金魚』を描く表現に度肝を抜かれる中に、読み進めれば読み進めるほどに鬼気迫りくるこのような作品を10代にして書かれた宇佐見りんさん。刃に触れただけで血飛沫が飛びそうな感性の鋭さを感じる物語に、ただただ圧倒されるのを感じたインパクト最大級の作品だと思いました。
2022/05/16
Apple
語り手の痛みを共有させられるような肉迫してくるような小説でした。主人公はかか(母親)に対して、愛情、憎しみ、罪悪感を向けていて、それによる痛みからの救済を求めるような内容の話みたいでした。主人公は19歳の女性であったみたいですが、まだ大人になりきれない、幼さのようなのが顕著に感じられました。現代の小説らしくSNSが主人公の窮迫した状況を描くのに役割を演じていると感じました。宇佐美りんさんの作品は初めて読みましたが、とてもパワーのある作家さんだと思いました。「三十一日」という短編は、読みやすくよかったです。
2022/11/10
ベイマックス
普段漢字で読み慣れている文字がひらがなで句読点なくつらなっていると読みづらい。そして、訛りも読みづらい。
2022/05/19
Ikutan
『推し、燃ゆ』の宇佐見さんのデビュー作品。出だしから強烈なインパクトでいきなり「おまい」に話しかける独特な文体に戸惑ったが、19歳の浪人生うーちゃんが「おまい」こと弟のみっくんに、家族のこと、特に心を病んだ大好きな母親、かかのことを伝えているのだと分かってからは、この言葉が真っ直ぐに入ってくるようになった。片寄った愛情を注ぐ祖母。離婚した身勝手な父親。理不尽な家族への怒り。女性に生まれ、心を壊した母親を突き放せない自分への複雑な思い。SNSに救いを求めるところに若さを感じた。こちらも豊かな感性がキラリ。
2022/08/02
ふう
ババからもとと(夫)からも愛されなかったかか。心の痛みに耐えられず生きていくのが困難なかかを、娘のうーちゃんは悲しいと思いながらも愛さずにはいられません。ただ、若いうーちゃんにとって愛し方、受けとめ方はとても難しくて、自分の心さえどうしていいかわからない…。どこにも持って行き場のない思いが作品全体に溢れていますが、いつかうーちゃんはこの悲しみの連鎖を終わりにすることができるのではと、少しだけ希望を持ってみたい気もしました。
2023/01/14
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