屋根裏に誰かいるんですよ。: 都市伝説の精神病理 (河出文庫 か 17-4)
屋根裏に誰かいるんですよ。: 都市伝説の精神病理 (河出文庫 か 17-4) / 感想・レビュー
keroppi
図書館の新刊コーナーで見つけて。精神科医の著者が、家にまつわる妄想や綺談を綴る。著者が関わった屋根裏に誰かいるという精神病患者の話は、惹きつけるが、その間に江戸川乱歩を始めとする小説が織り込まれ、少々混乱する。もちろん、それはそれで興味深いのだが。さらに、座敷牢や実際に屋根裏に住んでいたという事実もあって、家というものの怖さを感じる。「家は人間を住まわせる容器であると同時に、狂気を培養する孵卵器でもある。」もう少し、精神科医としての分析も読みたかったところ。
2022/12/21
yukaring
ミステリ好きの心をくすぐるタイトルに釣られて購入。精神科医が語る"幻の同居人妄想"の事例。こんなに江戸川乱歩的な文学的狂気に囚われている人が多いとは興味深い。本書は23年前に出た当時は全く反響がなかったのに、今年になってTwitterで取り上げられてから一気に火がついて作者も版元もビックリという面白い経歴の本。ごくごく普通に見える人々が「自分の家の屋根裏に誰かがいる」と訴える事例は世界中にあり、そんな題材のミステリや都市伝説も多い。屋根裏がそんなに奇妙な妄想を産み出す非日常の場所だという考察は面白かった。
2022/12/05
へくとぱすかる
23年も前に、現在の「家」の病理を先取りしていた。それがこの夏に話題と反響を呼んだ理由なのだと、読み終わって深く思い至った。どうしたらタイトル通りの妄想が生まれるのか。人間関係のひずみ、逆恨みなどの心理が、何もないところから怪奇を発生させていく。そういう過程が浮かび上がっていく。人間はつくづく孤立させてはいけないと思う。公共による支援がなかった昔は、もっと大変だったにちがいない。世間体よりも何よりも、適切な支援を入れていくことをためらわないことと、福祉の情報をさらに周知させていくことが求められるだろう。
2022/10/09
こばまり
四半世紀ぶりの復刊だそうだが時代を感じさせるのは病名くらいで今も十分面白い。文学作品とのリンクも楽しく、読んでみたい本が増えたが古い作品が多いので手に入るかどうか。私宅監置については以前観た呉秀三のドキュメンタリー『夜明け前』が理解の助けに。
2023/02/11
空猫
twitterでバズり ‘99年の『家屋と妄想の精神病理』の加筆改題して文庫で増販したという。「家」という心身ともに裸の状態に近い、超ガラパゴスな空間に、知らない誰かが「侵入」「覗いて」いるという小説、映画、都市伝説まで枚挙にいとまがないのは何故か?!。精神科医として出会った人々の事例から、ゴミ屋敷との類似、違法となる‘50年まで造られていた「座敷牢」まで今回も幅広く興味深い。 エッセイや対談よりこの手の考察本が本来のDr.春日ぽいね。
2023/09/28
感想・レビューをもっと見る