女二人のニューギニア (河出文庫 あ 35-4)
女二人のニューギニア (河出文庫 あ 35-4) / 感想・レビュー
ふう
1968年、文化人類学者の友人畑中幸子に誘われてニューギニアを訪れた作者の、想像を絶する過酷さを描いた紀行&滞在記。一行目から文の上手さに惹き付けられました。命の危機と言ってもいいほどの大変なできごとに何度も遭遇するので、読む方も真剣にとは思うのですが、あまりにもおかしくて吹き出してしまう場面もたくさん。関西弁の女二人の会話が本音だらけで最強です。深く考えずに行ってしまった作者もすごいけど、未開の地に女一人で住んでいる畑中さんはすごすぎます。帰国してからのマラリア発症の場面が一番怖かったような気がします。
2023/07/13
たま
有吉佐和子が1968年、文化人類学者の友人畑中幸子をパプア・ニューギニアに訪ねた記録。畑中は数年前に〈発見〉されたシシミン族の集落に住み込み研究中。有吉は現地の人なら8時間で踏破すると言う山超えに3日かかり、足の爪が剥がれ全く動けなくなりブタのように棒に吊り下げられて現地にたどり着く。有毒動植物に泥水、そして全身の痒み。二人とも1930年外地生まれの強靱さ。とくに「ほんまに弱虫やな。アカンツやな。そんなことでどうするんや。なんのためにニューギニアの奥地まで出かけてきたんや」と毒づく畑中さんがすごい。
2023/07/04
がらくたどん
佐和子復刊②河出の企画雑誌『スピン』の1号の「絶版本書店」という寝た子を起こすような企画で絶賛紹介されていた作品。翌年、朝日文庫から河出に移って再版された。所有の本の帯には「有吉センセイ、ついにシシミン族にパンツを縫う」という謎の文言も見られる。この手の誘いネタは読んだら大したことがない事も多々あるのだが、本作に関しては佐和子さんが縫ったパンツがシシミン族の文化に階級と差別の概念の種まきを果たした(かもしれない)のだ!『非色』とほぼ同時期に読んでいたので心底「ヒト」という生物に震撼した。とにかくオモロイ♪
2024/05/06
アイシャ
タイトルから受けた印象がすっ飛ぶくらいの強烈な体験記。文化人類学者の友人に「いい所だから」と言われて 軽い気持ちででインドネシアへの取材旅行の帰りに寄ったニューギニア。友人畑中さんがフィールドワークをするヨリアビまでは、最寄り空港から5つの山を超えて歩いて3日。最後は気絶して野豚を担ぐ要領で運ばれた。一週間で帰るつもりが爪が剥がれて歩けなくなり結局1ヶ月過ごした。読んでいてこちらも痒くなってくるほど虫に襲われ、ネイティブは服も着ずに皮膚病だったり、飲み水は茶色い川の水。本人曰く、タカをくくっていたと
2024/10/04
マリリン
予想を見事に裏切った傑作! ご両名の名前は知っていたが、著作は未読だったので良い機会を得、楽しい時間が過ごせた。今回の行動に駆り立てたのは作家ならではの好奇心なのか。想像を絶する旅の行程は苦難の中に笑える場面あり。シシミンとの交流が面白い。ニューギニアにとり憑かれた研究者感あふれる破天荒な文化人類学者畑中さんの思考や行動発言が興味深い。広東料理の高級スープ竜虎大会は...食をそそらないが覗いてみたくなる。ご当地グルメも想像を絶する。マラリアはヨリアピのお土産か。この旅を作品に昇華させた著者の筆力を感じた。
2024/02/26
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