綺堂随筆 江戸の思い出: 綺堂随筆 (河出文庫)
綺堂随筆 江戸の思い出: 綺堂随筆 (河出文庫) / 感想・レビュー
tosca
明治5年1872年生まれの岡本綺堂、感覚が今の我々とあまり変わらないので面白い。江戸時代の記憶がまだ残っている時代の日常生活を気軽に教えてもらっているようだ。東京に生まれ育った綺堂は、明治初期から日清戦争までを旧東京、それ以降を新東京と区別し政治経済から日常生活の風俗習慣まで様々な事が変わってしまったと考える。「東京のトンボが減った」とか「とんびを見かけなくなった」とか、まるで私達が今と昭和を比較しているような事を書いている。麹町に狐や蛙がいた100年前…日比谷公園の再開発なんか止めてくれ!と叫びたくなる
2023/05/29
みやび
これはとても興味深い内容だった。まだ東京に江戸の香りが残っていた時代の人々の日常生活や空気感がリアルに感じられる。明治5年に東京で生まれ育った岡本綺堂が、目まぐるしく変わっていく街の様子や風習に寂寥を感じ、当時を懐かしく思い出しては名残惜しんでいる姿は、今の自分達と変わらない感覚で面白い。いつの時代の人々も、失われてゆくものに対して抱く寂しさは同じなんだと思うと少し安心できる。幼い頃に綺堂が見た風景も当たり前にあった風習や風俗も、今はもうどこにもない。
2023/06/29
TSUBASA
『半七捕物帳』などで有名な岡本綺堂の随筆集。明治初期に生まれた綺堂は新しくなっていく東京にほのかに残る江戸の香りに名残惜しさを感じているようだった。とはいえ明治時代の文化が活写されていて興味深い。明治中期に年賀状が登場したとのことで、年賀状が増えたことで年始回りの人々が減ったのに寂寞を感じてたとはね。また、関東大震災についても克明にその被害を語っている。後半は中国由来の物語について。芝居の演目として有名だけど出自は中国だろうという話について元ネタ解説してる。耳なじみがあるせいか自来也の話が面白かった。
2023/05/17
hitsuji023
読んでいて、まだ共感するところがあるということは明治大正も遠いようで近いのかもしれない。懐かしさを感じる思い出の数々。東京にも鳶が飛んでいたことがあったのかと思ったり、昔はいた赤とんぼが一匹もいないことに味気なさを感じるなど環境の変化に思うことは時代も場所も関係ない。そして、関東大震災の記録は煙が迫ってくる様子が目に見えるようで貴重。また半七捕物帳を読んでいるかのような「西郷星」「ゆず湯」は実話なのか創作なのかわからないが面白くもあり、悲しさもあった。綺堂ファンにとって中身が盛り沢山な一冊。
2024/02/23
遠山
読んでいる間すっかり頭の中が江戸の残り香のあるような明治大正あたりになっているようで、遠くてぼんやりして、教科書の文章でばかり想起する大雑把で荒い昔のことがやけに生々しく、こと震災の時の記録が、なんというか、興味深かった。「昔の趣きが消えていく」「昔はよかった」みたいな言い振りはいつの時代でも言われるけれど、連綿と続いた江戸の風俗の類が薄れていくちょうど狭間を見せれらると少し寂しい。風呂関係の話、年始年末の話、よかった。中国の怪異譚は突然なんやねんと思った。江戸どこや
2024/08/04
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