毛皮を着たヴィーナス (河出文庫 マ 1-1 種村季弘コレクション)
毛皮を着たヴィーナス (河出文庫 マ 1-1 種村季弘コレクション) / 感想・レビュー
猫丸
愛の反対は憎悪ではなく無関心、とはよく言われる。本書の男は無関心を全力で回避するために鞭打たれることを望む者である。本当はじぶんだけを見つめる妻を得たいのだが、次善の方途として耐え難きに耐える。その意味で、専一に苦痛を追求するマゾヒズムへ至る発展の途上にあるみたいだ。痛みにとことん弱い僕などからすれば見上げた根性なんだが、現代マゾの皆さんはもっと先へ進んでいるに違いない。苦痛を超えてむしろ積極的に無関心を歓迎する。無視され放置されモノとして扱われる地点で愛の形はどのようなものか。進化を逆流する感覚?
2023/04/20
まあい
今になってようやく時代が追いついた、とでも言うべきか。激烈に迫ってくるものがあると感じていたが、やはり作者の実体験に基づいていたようである。そしてこの作品が作者の実人生に反映される……マゾッホの来歴まで含めて傑作。
2015/02/11
らむだ
“しかしマゾッホは作品のなかでヴィーナスの冷たい石像を生身のワンダへと蘇らせたばかりではなく、作品という大理石像から実生活そのものをも引き出してしまったのである。”という種村氏のあとがきに衝撃と感動。
2013/06/13
そーつ
サド読んだらこっちも読むっしょ♪って事で読了。全然サドより読みやすいし面白いと思う。ドMのゼヴェリーンに所々共感してしもうた、ワンダと契約後には流石についていけなかったが・・・。後書きで知ったけどマゾッホの生き方はすげぇ、虚構と現実が混同し始めるってどうよ?
2009/09/27
tomaton44
マゾの語源となった作者。そして、その代表作。なんかなぁ・・・。ゼヴェリーンはマゾとは違う気がする。鞭に打たれることを望んだり、絶対的服従されることを望んだりする点はたしかにマゾ的な要素はあるのだが。ゼヴェリーンの本質的な要素は「自分勝手」な気がする。なんかモヤモヤとしてうまく説明できないのだが、マゾ分30%、自分勝手分60%、その他10%くらい。マゾの代表作みたいな本作だが、同じような属性を持った作品として谷崎潤一郎の「痴人の愛」がある。こちらの作品のナオミとジョージの関係は完全にサド・マゾ的主従。
2016/10/29
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