食人国旅行記 (河出文庫 516A マルキ・ド・サド選集)
食人国旅行記 (河出文庫 516A マルキ・ド・サド選集) / 感想・レビュー
みや
駆け落ち先で誘拐された妻を探して各地を巡る物語。題名は過激なのにグロが無くて残念だったが、それぞれの国の事細かな説明が非常に面白かった。悪徳か美徳かを決めるのは、それまで棲んできた場所の習慣であり、それに囚われた偏見に過ぎないという考えが特に興味深い。自分で決めたつもりでも選択肢から選んだだけではないか。本当に自分の意思や好みで選んだだろうか。これまで使ってきた『自由』という言葉の生温さを痛感する。全てが極端な両国の様々な点に共感や納得した一方、一人の女のためにここまでする男の言動が最も理解できなかった。
2018/02/09
吉野ヶ里
タイトルから予想されるよりも、内容はマイルド。なんと尻を舐めないのだ! 少し理屈っぽい冒険小説であり、わくわくしながら読める。旅をするのは悪徳の支配するビュテュア(食人国)と美徳の支配するタモエ。一般的で、清濁ともにある主人公の目を通して、各々の理屈を見てゆく。タモエはタモエで生きにくそうだと思うけど、ビュテュアだと生き残るのが難しそうだと思いました。性別によってはビュテュアの方が好ましい方も多いかもね。タモエだって理屈立ててはいるけれど、人間の欲望を押さえつけている。レズビアンは生き残る術がなさそう。
2020/05/12
ラウリスタ~
うん、これはあれだな、勝手なタイトルつけんな澁澤!ってやつだな。18世紀のユートピア小説の最高傑作のひとつなんじゃないか。おもに二つのユートピアに行く。一つのユートピアは、アンチ・ユートピア。西洋文明の常識に捕らわれた主人公にとってはまさに地獄。それなのに、彼らの言うことは、なんだか妙に説得力がある。そして、もう一つが、ほんとのユートピア。西洋、アンチ・ユートピア、そしてユートピア。道徳とは、宗教とは、法律とは、監獄とは、統治とは・・・って議論が延々。これは予想の斜め上。理想的社会主義の理想郷?
2013/03/16
Ayah Book
駆け落ちした恋人同士が離れ離れになってしまい、各国を巡る冒険譚。このドタバタが意外に面白い。そしてまたサドお得意のお説教が長い。社会主義的なタモエの政治は共感する部分もあるが、現代の感覚だと頷けない部分も。それを差し引いても、確かにサドは進んでるとは思う。
2019/07/03
shiaruvy
△本棚捜索後詳細記入 やっぱりサド侯爵は素敵すぎる!!
2017/12/29
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