ロシア怪談集 (河出文庫 538A)
ロシア怪談集 (河出文庫 538A) / 感想・レビュー
三柴ゆよし
プーシキン、ゴーゴリ、ツルゲーネフ、ドストエフスキー、ナボコフなど、ロシアを代表する作家たちの作品が勢揃いしており、リアリズム偏向と思われがちなロシア文学史の裏面を垣間見ることができる貴重なアンソロジー。特にドストエフスキー「ボボーク」、ソログープ「光と影」に出会えたのはよかった。前者は奇妙な味わいの滑稽譚、後者はふとしたことから訪れる狂気を静かに描いた作品で、いずれも佳作。ちなみにゴーゴリの「ヴィイ」は水木しげるの短篇の元ネタにもなっている。
2011/07/27
はる
プーシキンからナボコフに至る百四十年ほどのロシア作家による幻想作品アンソロジー。明瞭な日本的怪談とは随分異なる。所謂怪談話とするにはトルストイとチェーホフくらいではないだろうか。聊斎志異的な滑稽なものはドストエフスキーのものだろうか。ナボコフの空想の実現に立ち会うというのは楽しいものだ…輿に乗るともう押し止められない、は作家たちの言葉遊びの本音の気がする。ソログーブは影絵遊びに虚実が無くなる母子の話だが、アンソロジー全体として、この虚実が溶けて曖昧になってゆく不気味さがある。
2024/06/15
そのじつ
チェーホフ初めて読んだ。なんだかロマンティックな気配を醸している箇所もあって、乙女心をくすぐられた。ボボーク、ヴィイ、聞き慣れぬ音の列が禍々しさを勝手に付与する。古典的な怪談話もあれば、神経症の夢想のような話もある。ゴーリキーの訳文が古風で楽しかった。寛袴(シャロワールイとルビつき)とか作男なんて言葉が。珍しく辞書をひいて意味を調べてしまった。なんとなく分かるけど、調べてみると中国の文化が由来(?)の言葉が多かった。昔の高等教育を受けたひと達は漢文が必須だったんだっけ。ナボコフの作品が余韻があって好きだ。
2013/03/04
belier
ロシア文学の文豪たちによる怪談集。時代が新しくになるにしたがって話が複雑になっている。真ん中どころのトルストイ、ツルゲーネフは単純すぎず、ややこし過ぎず、展開はだいたい予想通りでも楽しめた。トルストイの描写力はさすがで、最後のシーンはホラー映画的に映像が脳裏に浮かんだ。後半は思索へ誘う複雑な作品が並ぶ。最後は革命から逃れたナボコフの短編。書いた本人が一番怖かった内容だろう。古くてぶ厚い文庫本で細かい文字がびっしりだったが、意外とすいすい読めた。
2022/10/14
Нелли(ネリ)
全体的に怪談ぽくない。真正面から「怖い話」に分類できそうなのはゴーゴリと「吸血鬼の家族」くらいか。「幻想小説集」のつもりで読んだほうがよい。ナボコフがロリータのイメージとかけ離れていてちょっと意外だった
2016/05/27
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