悪徳の栄え 上: マルキ・ド・サド選集 (河出文庫 516E マルキ・ド・サド選集)
悪徳の栄え 上: マルキ・ド・サド選集 (河出文庫 516E マルキ・ド・サド選集) / 感想・レビュー
徒花
上下巻読了。長い! 基本的に、倫理観の欠如したフランス人女性・ジュリエットが欧州諸国をめぐりながら悪逆非道の限りを尽くしていく物語で、ストーリーの構造自体は単純。ただ、とにかく同じような酸鼻をつく場面が幾度となく繰り返されるのと、その合間合間に「悪とは何か」「正義とは」「法律とは」「国家とは」といったサドの哲学が様々なキャラクターの口から語られる。ある意味で救いと言えるのは、主人公をはじめとする登場人物たちが、自分の行為を悪だと自認したうえで実行している部分だろうか。
2017/05/19
夜間飛行
ノアルスイユが小間使いに盗みの罪を着せ、ビセートルの土牢に一生閉じ込める企みを語ると、ジュリエットは罪が快楽をかき立てることを悟る。この悪魔のような女はサン・フォンの薫陶も受け、17歳にして一通りの悪を経験し、パリで最も美しく汚辱にまみれた女となる。ジュリエットの成長と遍歴こそサド一生の収穫だろう。サドの小説は現実の裏返しだ。パリではギロチンが猛威を振るう。乞食や病人を鞭打ち・烙印して追放したり、監禁したりもしたらしい。サドは狂気の支配する世界を描くことによって、ただの見世物を文学にまで高めたのだと思う。
2013/11/07
ナマアタタカイカタタタキキ
バタイユの『眼球譚』を読んだ時(私にフランス語の素養が全くないというのもあって)ほぼ理解不能で、この手の常軌を逸したフランスの古典は、どうも私には敷居が高すぎると感じて敬遠していた。だが、たまたま書店で見かけて手に取ってみて、難解すぎるということもなさそうだったので何となく読み始めたら、まあ面白い。これは抄訳版らしいが物足りないという感じは全くなく、むしろ取っつきやすくて良かったのかもしれない。それでも、あまりに惨たらしい描写は明らかに読む人を選ぶだろう。各々登場人物が、蛮行を働くに至らしめた思想を→
2023/10/04
みや
悪の哲学を信じて残虐非道の人生を謳歌する姉ジュリエットの物語。対となる妹の『新ジュスティーヌ』は読了済。禁じられていること、世間では悪いとされることをやるのって最高に快感だし、悪徳こそが自然の摂理だよね!と信じる人たちが悪行の限りを尽くすだけの物語だが、そこに暗さや狂気は微塵もなく、犯罪行為を心から楽しむ姿は見ていると清々しく晴れやかな気持ちになってくる。多種多様な変態性癖が登場し、新しい世界が広がっていった。彼らが滔々と語る悪徳の素晴らしさが理に適っているのも面白い。善人が救われない物語は爽快。大好き。
2020/02/27
KI
読書というより毒書。
2018/04/29
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