破壊しに、と彼女は言う (河出文庫 テ 1-4)
破壊しに、と彼女は言う (河出文庫 テ 1-4) / 感想・レビュー
南雲吾朗
凄く良い。凄く好きな種類の文章、進行具合。気狂いとその境界にいる人々。自他ともに認める気狂いのアリサ。自分の事を気狂いだと認める気狂いは居ない。よってアリサは偽りの気狂いである。気狂いの様をしている破壊者である。まるで剃刀の上を歩いているような危うい均衡と緊張感をもった会話。ゆっくりと流れる時間。白昼夢の様なennuiな風景。改めてデュラスは凄いと思った。
2021/10/26
えりか
沈黙に込められた叫びが聞こえる混沌とした、狂気と愛の世界。彼女は破壊しに、と言う。秩序、倫理、世間の破壊。その破壊は常識に押し潰された彼女たちの精神の救済。彼女たちが恐れ近づくことができなかった森は外の世界、世間。森は暗く、一歩先もわからない。どこからともなく音が響き渡る世界。いつまでも内なる世界であるホテルへこもっていてもいい。そこに倫理も常識もない。沈黙だけ。みなが孤独であって、みなが愛し合うことのできる世界。ホテルから森を眺める時、一体どちらの場所が人間にとって本来あるべきところなのかわかるはず。
2016/09/25
Roy
★★★★☆ 素敵な題名。何を彼女は破壊したのだろうか。他人?関係?自分?しかし、破壊を好むのは彼女だけではない。鈍い色の雲が広がり、時折光る稲妻に打たれ機能しなくなる僕の脳味噌。難しいことは分からないし、途中彼とか彼女とか誰を指してるのかすらも分からなくなったりもして、何度も行ったり来たりをしたのだが、この物語は狂人達の休息なのではないか、と思う。仕掛けるのもまた楽しい休息時間だ。
2009/05/25
パラ野
本書が届いた日に読んでいたのは「ユダヤ人の家」だった……。ネタバレオンパレードの後に読みました。いや、デュラスの言葉の「十通りの読み方がある」というのなら、あの解説だって、読みの一つでしかないのだ、と思う。「愛のための破壊」のために来たアリサ、彼女と共犯の男2人(彼らは「ユダヤ人の家」では同一人物になる)。女女、男男、男女、どの組み合わせへの可能性が開かれている。ただし、愛すること=破壊することができるなら。そんな神経戦みたいな本でした。
2014/08/04
gorgeanalogue
「破壊しに、」という「主題」の懐胎(妊娠)はしかし「無限に続く前置きにひっかかってる」ので成就されることはなく「書く」という不定法のかたちでうずくまっているだけだ。
2024/05/19
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