北の愛人 (河出文庫 テ 1-9)
北の愛人 (河出文庫 テ 1-9) / 感想・レビュー
コニコ@共楽
デュラスが70歳で出版した「愛人 ラマン」から7年後に書かれたこの本、原題は、「中国東北地方出身の愛人」という意味だそうだ。「愛人」と似ていながら、より細部に踏み込んだ物語。前者が散文詩だとすると、こちらは、細部を練った小説の様相だ。そして、映画のシナリオのようなところもあって、話がたどりやすい。性愛を描きつつ、漂う通奏低音は死の匂い。デュラスは、死を感じることで生と性をもう一度描きたかったのだろうか。
2021/03/14
マウリツィウス
フランス現代文学の試みは逆転世界としてボルヘスを利用したことでジャンル間の葛藤課題でもあった娯楽/教養両軸を柔軟引用することでシェイクスピア影響下を遮断しつつもその諧謔を免れないジョイスを相互参照批評、ゴダールとのリンクは後世に成立しジョイス界と共鳴反応、打倒すべきアメリカ・ポストモダニズムを十分に駆逐し得る作家達は事実教養的側面で日本作家に定評を得る。そのことにより出現したボルヘスとレムの融合参照は批判的見解を踏まえつつも実際はジョイスと共に彼を称賛していると言え、フランス主題はジャンル越境と知的同化。
2013/05/24
Koki Miyachi
映画『愛人(ラマン)』に不満をもったデュラスが、映画化をイメージして同じモチーフで新たに執筆した作品。ラマンで一人称で語られた物語が、ここでは三人称で語られ、当然だが、より映像的に仕上がっていて、また違った味わいの愛と死の物語になっている。
2013/08/27
zoros
『愛人』の中国人青年のことと、少女との間の会話がある。『愛人』では書かれなかった、二人きりの時間がわかる。 物語は視覚を優先させ、今どのような情景なのかが繰り返し書かれていて、実際そのように読める。 デュラスのある種の諦観は、詐欺による貧困生活と母親の長男への偏愛からきているとおもう。そんな母親を愛してる自分にへもの諦観かな。次兄との交わりは、もう母性で禁忌とさえ感じないまま書かれてる。独自の世界を持つ、美しい少女だったんだな。彼女は甘い経験をしたのだなぁ。 苦しいだろうけどこんな恋愛を経験してみたい。
2017/05/07
micamidica
須賀敦子さんの書評に惹かれて。「愛人」は未読です。 第三者の視点(というか、カメラレンズ)を明確に意識して語られた作品。その中に、東南アジアらしい湿り気のようなものが絶えず感じられます。おそらく著者をあらわす少女と中国東北部出身の男性との出会いから別れまでの物語。いつかもういちど読み直したい。訳者さんの苦悩もうかがわれたが、「北の愛人」とか「ランドセル」とか、訳語はもっと良いものはなかったのだろうか…。(関係ないけれど少女の身体つきは「レオン」のマチルダを想像してしまった)
2016/09/15
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