チリの地震: クライスト短篇集 (河出文庫 ク 5-1 種村季弘コレクション)
チリの地震: クライスト短篇集 (河出文庫 ク 5-1 種村季弘コレクション) / 感想・レビュー
梅村
文庫にして二百頁程の短編集なのですが、長編数本読んだような疲労感があります。小説として成立するギリギリまで無駄を省き濃縮した文体で次々と繰り出される、暴力的なまでに怒濤の展開と唐突に突きつけられる悲惨な結末の中毒性は中々。夭折が故の寡作が惜しまれます。かのフランス革命のアレゴリー的作品とも言われる表題作『チリの地震』と、全くの別作品ながらまるでその行く末の物語のようにも読める『拾い子』が個人的にお気に入り。『聖ドミンゴ島の婚約』のラストの展開はどうしても拳銃自殺した著者のそれを重ね見てしまいます。
2015/08/20
つだしょ
短編ではあるがざっと読むにはかなりの集中力がいるほど、情報過多。訳者の解説に「完璧な文体」とあるが、何が完璧なと形容できるのかは疑問。よほどクライストに縁があるか、よほどの暇人ならじっくりじっくり読む価値がある。読んでいてだんだん腹が立ってくる。描写やはなしの内容が優れていても、幅広い読者のためには書かれていない。もっと、簡単に書けるはずだ。そうすると、おそらく短編にはできないんだろう。読みづらい。
2012/04/16
ミャ〜コ
最高
2024/09/18
小皿
他のウェブサイトのレビューに、誤訳がある、原文も錯綜しているとあったけど、確かに読んでいてよく分からない部分がちらほら。でも、人間の禍福を超えた運命の力を見つめる語りについ説得されて、細部の瑕はだんだん気にならなくなった。「拾い子」の終わりかたがかっこいい。
2021/01/28
bittersweet symphony
若くして自ら命を絶ったドイツ・ロマン派期の劇作家の短編小説集。未読本棚の最古参のうちの一冊。ちと不純な動機かなと思いつつ読み始めたものの、自己陶酔的修辞を極限まで削ぎ落としたうえで、人知では如何ともしがたい不条理に翻弄される人々が意図的に簡潔に描かれている様に驚嘆。表題は1647年にサンティアゴ周辺を襲った大地震を舞台にめまぐるしく変転する運命に絡めとられる人々の物語。あとがきの種村さんのクライストの経歴のまとめ方のWIKIのそれとのギャップが面白いところ。
2010/03/10
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