大胯びらき (河出文庫 コ 3-2)
大胯びらき (河出文庫 コ 3-2) / 感想・レビュー
青蓮
愛し、愛される、これが理想である。ただし、同一人物について、という条件が必要だろうーーコクトーの作品は小説と言うより、絵画的だ。溢れる鮮烈なイメージの洪水。それは翻訳者の澁澤龍彦の言葉のセンスも大きいだろう。本書はよくある青春小説だけれど、洗練されたエレガントな雰囲気がある。「大跨びらき」とはバレー用語で「両脚を広げて床にぴたりとつけること」で、幼い少年が一人の青年へと成長していく暗喩でもあるらしい。
2016/11/05
ヴェネツィア
澁澤龍彦の翻訳デビューがこれだった。澁澤26歳の刊行というから驚きだ。まるでポルノグラフィーのようなタイトルだが、これは原題そのままを訳したもの。ただし、これは舞踏の用語であり、また作品中ではカンカン踊りのフィナーレとして登場している。物語には、いわばパリ版の高等遊民が描かれており、青年期への大きなステップを表してもいるのだろう。澁澤の高く評価する恋愛小説とされるが、共感性の持ちにくい作品でもある。コクトーの自伝的な要素も強く、コクトー自身をも、そして読者をも突き放した描かれ方がされているからだろう。
2013/04/03
芍薬
澁澤さんは女心の動きを表現するのが非常に上手です。「美男薄情」の恋する女の激情や「哀れな水夫」の妻の必死さが共感できて怖ろしい。
2013/08/26
qoop
表題作は流されやすく傷つきやすい青春のあり様を書いた中篇。前後の180度開脚というバレエ用語をタイトルとしたのは、訳者・澁澤龍彦のいう通り少年期と青年期の距離でもあろうし、恋愛と失恋、生と死、あるいは母への相反する感情など、間を埋めかねる様々な隔たりの両極に、同時に接する心のあり方を表したのだろう。過剰で幼稚な自意識に溢れた主人公の姿は、両極のあいだの深淵を確固たるものとして伝える。他に多様な印象を残す戯曲四編を収録。
2017/04/06
水菜
美文だなあ。青春と恋愛のごたごた。生の困難さに苦悩するさまは『限りなく透明に近いブルー』の雰囲気も感じる。ジャックの自殺未遂の描写が素敵。泥酔したときそんな感じだわー。『美男薄情』はヒモ男に振り回されながらも離れられない女がひたすらしゃべりまくる。その口調がまさに依存しちゃってる感で、口ではどんなに言っても離れられないんだろーなーと思う。『哀れな水夫』は悲劇なのか喜劇なのか。やっぱこそこそするのってよくないよ、ねえ…。
2013/09/10
感想・レビューをもっと見る