宿命の交わる城 (河出文庫)
宿命の交わる城 (河出文庫) / 感想・レビュー
hagen
タロットカードは占いの道具として古くから使われてきたツールツールらしいが、作者のカルヴィーノが利した創作の糧としてのカードが表現する図柄は、その配られた順序やカード同士の配置から無限大の物語りを紡ぎ出す機械として機能する。登場する人物たちがカードを机に配置しながら語り始める物語りの数々は、何かに操られた様に脈絡を越えた世界を映し出し昏迷した心境にさせられる。読み進めていくうちに、戸惑いに眩むのと同時に指し示された図柄から浮かび上がる世界観が、文字のリズムと歩調が合う事により読みの喜びを感じとる事が出来る。
2021/02/21
鳩羽
森の城に偶然集った旅人たちは、自分の物語をタロットカードを使って語ろうとする。会食者たちは示されたカードの意味、絵柄からその物語を読み解いていくが、誰かの物語の一部が自分の物語の一部となり、やがてテーブルの上には縦横にカードが敷き詰められる。あらかじめ決まっていたかのように、過去の悲劇も未来の話も、すべてがその織り合わさった世界のなかに収められるのだ。読みものとしては終盤が複雑で息苦しい感じがするが、どの意味を引き出し、利用して物語るかという作業に参加しているように思えてくるのがエキサイティングだった。
2015/10/13
kroon@きろん
表紙のデザインも、中身(小説の企画)も企画ありき、に尽きる本でしょうか、最後の方で飽きて読み止めました。再読したら感想は変わると思います。
2015/07/13
kaze
城に集った声を失った客がタロットカードを並べて己の物語を語り合う。ある人が並べたカードは別の人が反対方向から読み解くと全く別の物語となって再構築される。そうやって、横に、縦に並べたカードが見事な物語のタペストリーになって完成した所は圧巻であった。しかし巷のタロット占いのカラクリを見たような気にもなった。が、後書きを読んで、そんな簡単なものではなかったと知る。カルヴィーノは何度も書き直したり中断したりで何年もかかってこれを書き上げたんだな。
2020/03/23
ダイチ
そこは森の奥にある城。辿り着いたものたちは寡黙に自分たちの身に何が起きたか語ろうとするが言葉が出てこない。彼らは傷つき疲れているのだ。言葉の代わりにタロットカードを並べることで自身に起きたことを語り始める。一人の物語は違う誰かの物語を呼び、更に繋がっていく。文学の魔術師と呼ばれたイタリアの作家イタロ・カルヴィーノの晩年の作品。正直この作品は半分も理解していないかもしれない。でもその異様さは感じ取れた。解説を除くとわずか190ページしか満たない小説にかなり時間を取られた。しかし面白い。そして文章が綺麗。
2018/02/28
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