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不在の騎士 (河出文庫 カ 2-4)

不在の騎士 (河出文庫 カ 2-4)

不在の騎士 (河出文庫 カ 2-4)

作家
イタロ・カルヴィーノ
米川良夫
出版社
河出書房新社
発売日
2005-12-03
ISBN
9784309462615
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不在の騎士 (河出文庫 カ 2-4) / 感想・レビュー

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syaori

鎧の下はからっぽの、意志だけで存在する不在の騎士アジルールフォの冒険のなんと奇想天外で素敵なこと。存在しているのに自分の存在を理解しないグルドゥルーを従者にし、海の底を歩いたり、彼の実直な騎士ぶりさえもどこか滑稽です。その物語を紡ぐ修道尼テオドーラの語り口もとても魅力的。しかしアジルールフォたちの冒険や、アジルールフォの鎧をまといブラダマンテを手に入れるためにアジルールフォのふりをするランバルド、名前を変えるブラダマンテなどを眺めつつ、存在とは、自分は存在しているといえるのかと奇妙な不安も感じたのでした。

2016/08/18

そふぃあ

理想の騎士を体現するのは、文字通り「不在」である空虚な存在。永久に恋した女性を求めて彷徨う宿命にあるかと思われたランバルドも、最後はメタを突き破った大団円の未来に進むことができそうで良かった。摩訶不思議なものを受け入れる余地がなくなり、美徳が失われた現代には、「不在の騎士」が現れることはないだろう。なぜなら私たちこそが空虚な存在になり得るからだ。

2019/11/18

taku

初カルヴィーノ、面白かった。幾つもの寓意が仕掛けられた、コミカルな騎士道物語。存在論を突きつけてくるようで、色々な事柄を揶揄していて、それは物語そのものに対してでもあるような遊戯感覚。英雄や伝説は創造によって存在し、現実はこんなもんよとでも言うように。人は経験を誇張し、記憶を都合よく変えてしまう。正確な記録はときに不都合だと言うように。道中を楽しめる冒険ものであり、それぞれの納め方、オチのつけ方もいい。枠から出てきた人物がどのように語っていたとしても、物語はここに存在している。

2019/08/21

501

初のイタロカルヴィーノ。生身の人間として存在していない(鎧の中が空っぽ)、意識のみが存在している騎士が、自分の存在を意識できない、生身の人間として存在している従者と、自分の存在意義を確認するための旅する。幻想とリアルの交わり具合が絶妙で不思議な浮遊感がある。小難しいことを考えずに物語を楽しみながら、読後には人間の存在とは何か哲学的な思索を自然と考えてしまう面白い物語だった。

2019/10/08

あ げ こ

自分自身が存在している事の証となるものを、ただ一つだけ持つそれを、遵守し続ける。それ以外何も持たず。誰よりも強く、脆い。不在の騎士。他に何もない事、それのみを理由とし、在る事…大変怖い事だ。突如として自分を失い、他と混合してしまう従者の可笑しさ。枠を隠れ蓑に、区別のつかない与太を繰り返す連中のどうしようもなさ。ただ組み込まれているだけであった住民達の悲哀。笑って通り過ぎる事の出来ない齟齬が沢山。けれど自分があると、気づいたもの達のたくましさよ。図太さよ。力強さよ。ここにいると、語り手より出でた叫びもいい。

2016/05/19

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