海を失った男 (河出文庫 ス 2-1)
海を失った男 (河出文庫 ス 2-1) / 感想・レビュー
藤月はな(灯れ松明の火)
「ビアンカの手」は皆川博子作品での異形への愛と川端康成の「片腕」のようなフェチズムの官能性に満ちた作品で耽美でありながらも恐ろしい一品で個人的に好きです。「成熟」はエレファントマンと『アルジャーノンに花束を』かな。永遠に成熟し続けたロビンが見つけた真理が哀しくも人間への愛で満ちている。「墓読み」は妻が夫に向けた言葉に切なさが募ります。「そして私はおそれがつのる」は『人間以上』の骨子かしら?超能力の大先輩で全体の善を求めるフィービーが情愛による愛を否定する様子は性に対する恐れを抱いた女性の典型のよう。
2016/10/08
sin
わからないから知りたいと思い、まるで関心を引きたいかのように知ったかぶりしてみる。奇妙な振るまいが魅力的で、平凡が特別になる。嗚呼まるで恋心のようではないか?鼓動は音楽、身を捧ぐ、成熟の証、投影された自我、人徳のすすめ、善悪は表裏一体、自制心あるいは還らぬ人へ払う敬意、走馬灯、8つの短編それぞれに記された洞察が心を擽り、翻訳に移し変えて尚そのスタイルに魅了される。
2020/05/05
Shun
翻訳者によるスタージョンの魅力発掘といった内容の作品集。いくつか難解な内容でしたが、それは今まで読んだことのない独創性なアイデアによるものだからかもしれません。頭の中で小説世界を映像として想像するのは難しかったものの、不思議と惹き込まれる世界観、そして語りにおいても優れた文章だと思います。中でも私が惹かれた作品は「成熟」という1作。生物的に未熟な成人男性が医療処置によってその資質を向上させ”成熟”とは何かを模索していった末、得た答えが絶妙な感慨を生む作品。このSF感とテーマがアルジャーノンを想起しました。
2021/03/30
miroku
スタージョンのイマジネーションは、現実を深く思考することから始まる。いかに突拍子もない物語であろうとも、感情移入出来るのはそこに由来すろのかも知れない。スタージョンは、・・・本当に良い♪
2012/09/19
月世界旅行したい
SFだけでなくメインストリームでもやれそうなかんじ。この作者の書く変人は本当の変人だ、たいていの作家の書く奇人変人なんて上っ面のニセモノだけどこの人は本当の変人が書ける。すばらしい作家です。
2014/04/11
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