神曲 天国篇 (河出文庫 タ 2-3)
神曲 天国篇 (河出文庫 タ 2-3) / 感想・レビュー
よむよし
偉大な先人の後継者であるはずの指導的立場の人間がそれにふさわしくないことに「…この樹は昔葡萄であったが今はイバラとなった」(第24歌)と天国でも怒りを顕にする。魂の旅はダンテ自身の体験に基づいていますがそこに留まらず、悩める人をいかに導くかが全編に満ちている。公職を剥奪され祖国フィレンツェを追放されて苦悩に満ち、光も歓喜もないように見えますが「豊かな希望をもつ人」(第25歌)とベアトリーチェが言うように、未来を信じる実感を持っていた。天国はダンテの魂そのものを表し人々に希望を送る喜劇なのでしょう。
2024/03/31
ベイス
地獄編→煉獄編→天国編と、次第に人間の罪業が薄まり、観念的なテーマが濃くなってゆく。スイスのヒルティは『幸福論』の中でその薄さの原因を「人間の言葉は非物質的なものを表現するのに適さないから」と指摘している。私の印象は表現というよりそもそもやはり私たちが根源的に惹き付けられるのは人間の犯す「罪と罰」にあって、いくら「天国」を語られても、同じ分量・様式でという前提があるかぎり、いかんともしがたいと感じた。そんな「制約」がありながら、むしろよくぞ文体の格調を失わず書き切ったな、というのが率直な印象。
2023/05/15
優希
映像的な物語というより、神学的要素が強いように感じました。ベアトリーチェと共に天上へ向かうダンテ。輝くばかりの魂に歓迎されながら天国への道を登りつめ、ついに神との対面を果たすのはこの物語のクライマックスといえるでしょう。神聖喜劇として名高い名作として文学史に名を残しているのも納得です。
2017/12/13
南北
天国編は第一天から第十天まで行くのですが、天動説に基づく天国の描写でそれぞれに惑星や太陽が廻っていたり、第七天からはしごをかけて登る描写もあり、ダンテの立ち位置を思い描くことがうまくできませんでした。何かというとベアトリーチェの助言や同意を求めていくダンテにも好感が持てませんでした。最後にはダンテ自身が紡ぎ出す言葉も無くなるほど光あふれる天国は素晴らしいところなのかもしれませんが、私自身キリスト教を信仰していないせいか、あまり感銘は受けませんでした。やはり地獄編が一番おもしろかったですね。
2020/06/20
優希
三日三晩を煉獄で過ごしたダンテは、ベアトリーチェと共に天国へと向かいます。光明を放つ魂たちの歓迎を受け、天国を上りつめ、ついに神との退治を果たすのはこの物語のクライマックスと言えるでしょう。天国編は戯曲的な物語というより、神学的要素が強かったように思えます。「神聖喜劇」と称され、世界文学の頂点に立つ壮大な物語には、何度読んでも魅了されます。
2024/04/09
感想・レビューをもっと見る