プレシャス (河出文庫 サ 3-1)
プレシャス (河出文庫 サ 3-1) / 感想・レビュー
bianca
軽くチャチャっと感想を書ける話ではない。プレシャスと名付けておきながらのこの仕打ち。「母は子供を守るもの」が常識ではない、大人たちの思考が完全に止まった朦朧とした世界。まるで泥の中に産み落とされたよう。真っ暗で、身動きできない、窒息しそうに苦しい。幼く若い彼女たちは、あまりにも無力で、苦境を訴える表現を持たない。皮肉にも実父の子を二人も産んだプレシャスが、母性に目覚め、前進を始める。一歩ずつ進む。プッシュして、逆境を押しかえせ。
2017/08/28
やいっち
薄っぺらい本。だけど中身は濃くて重い。12際で父親にレイプされ障害児を生む(レイプは幼児の頃から)。更に父親にエイズを移され出産。母親には、夫を奪ったと詰られ、子供らの養育費は母親が手に。でも、凄さというのはこの先で、特殊な学校に曲がりなりに通い、文字を単語を文章を習い身に付けていく過程。文字通り、這い上がろうと必死に。作品の表現も、無明から日が射しかけるその過程を表すかのよう。作家の表現力であり、翻訳の力でもある。
2019/01/28
空猫
東江訳本から。親、家族に虐待される話は悲しいことに珍しくもないけれど。これは虐待された女性の自伝、自らのルポルタージュ、いや心の叫びなのだ。実父に7歳(!)から日常的にレイプされ、実母には暴力、学校にも通えず12歳で妊娠…。そんな状況でもプレシャス(この皮肉な名前!)は明るい未来のために学ぼうとし、子供を大切にし、人を信じ愛そうとしたのだ。元の題名は「Push」この言葉には「押す」の他「いきむ」「ふんばる」という意味があるそうだ。そして彼女が少しづつ学力を向上させていく文章表現に東江訳の匠を見た。
2018/12/07
myc0
1月以上経ってもまだ上手く消化できていない。両親から(驚きなのは、母親からも)性的虐待を受けて育った少女•プレシャス。不幸な家庭環境に加え、通常の学校に行っても文字の読み書きを覚えられずに育った彼女は、2度も実の父親との子供を身ごもる。 1人の不幸な少女であり、そして母であり、そんな自分を語る術を持たないプレシャス。少しづつ文字を覚え、書く事ができるその成長を、この本を「観ること」で目の当たりにすることができる。作品の内容ももちろん素晴らしいのだが、それ以上にこの作品を訳した訳者が素晴らしい。翻訳作品は
2015/06/24
chiseiok
やばかった。一切の飾りを排した重くて切ない生の言葉が、どすんどすんと胸を叩く。人前で狼狽するほど涙腺には来ませんでした。が、そのかわり普段は皮肉やら諧謔やらで何重にも装甲されてるはずの、心のどこかの柔らかい場所を、難なくわしづかみされてびゅんびゅんシェイクされちゃった感覚。今まで味わった覚えが無いし、果たしてこれを単純に感動と表現して良いのか分かりませんが、とにかく凄かった。故東江一紀氏の命を削って仕上げたような訳もまた凄くて…。凄い凄いばっか言っててすみません。語彙が貧弱だなー自分。
2015/10/02
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