オン・ザ・ロード (河出文庫 ケ 1-3)
オン・ザ・ロード (河出文庫 ケ 1-3) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
タイトル通りのロード・ノヴェル。舞台はニューヨークからサンフランシスコ、ロスまでの全米をそれこそ縦横無尽に。時は1948年なのだが(出版は1957年と遅い)、時あたかも東西冷戦の最中である。それどころか、どこにも第2次世界大戦の影さえも見えないのである。その頃、日本はまだ焼け跡闇市の時代だっただろう。語り手のサルもディーンも他の登場人物たちも等しく全米を駆け抜けてゆく。目的地も、そもそも目的そのものさえないように見える。そして、それこそがビートニクの所以であろうか。「イージーライダー」に先立つこと20年。
2021/04/16
扉のこちら側
2017年143冊め。【280/G1000】長大な暇つぶしの旅のゆくえ。放浪者の息子として生まれ自身も定住しない、路上に生きるディーン。そのディーンを通して語られるアメリカンスピリット。第3部で定住してしまっているディーンによって物語は雰囲気が変わる。第4部でまた行き当たりばったり感が増してくるが、この行き当たりばったりというのがこの作品のおもしろさ。
2017/02/12
藤月はな(灯れ松明の火)
映画『北国の帝王』に登場するような誇り高きホーボーになりたかったまま、大人になった青年たちが第二次世界大戦後のアメリカを駆けるロードムーヴィー。しかし、戦勝国となったアメリカで将来への夢がないから「貧しい日本人やアジア人のようになりたい」と思うサル達にはどうしても「随分、傲慢で贅沢だこと」と冷ややかな目線に成らざるをえませんでした。しかし、サルが現実に適応していったのに対し、気紛れで周囲の迷惑も顧みず、はしゃぎまくるディーンが現実に繋ぎとめてくれるだろう、いなくなった父を求めていたというのが少し、切ない。
2016/08/09
at-sushi@ナートゥをご存知か?
著者がモデルの主人公と愉快な仲間達の狂気の沙汰のようなヒッチハイク&ドライブを、殆ど改行の無い疾走感の塊のような文体で描きヒッピーの聖典とされた作品。旅の途中で金が尽きてもお構いなし。身体一つでどうとでもなるのが若者の特権だが、そんな時期が永遠に続くはずもなく、今で言えば完全にアスペなディーンが狂っていく様が切ない。(実際、モデルとなった男は、路上で裸で死んでたそうな)「♪眠らない体を~、全て欲しがる欲望を~」という奥田民生の「イージューライダー」がずっと脳内再生されてた。
2020/05/12
えりか
借り本。クール!クレイジー!心臓がウズウズしてくる。ビートを刻む。痺れる。いてもたってもいられない!今すぐ旅に出たくなる。飛び出したくなる。そのロードはわくわくすることはあるか?楽しいか?元気になれるか?音楽はあるか?夜は足りてるか?ぼんやりと悲しみが込み上げてくる時もある。一人ぼっちの時もある。不安に押し潰されそうな時もある。このままでいいのか、他に何かあるんじゃないのかと考えてしまう時もあるかもしれない。最終的なものは手に入らない。でも手に入れようとして、みんな必死に自分だけのロードを歩んでるんだ。
2016/05/08
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