ロシア怪談集 (河出文庫)
ロシア怪談集 (河出文庫) / 感想・レビュー
HANA
ロシアの小説は一見リアリズムであるが、その背後に奇妙な祝祭的空間と神秘小説の一面が見え隠れしている作品が多いわけであるが、本書に収録されている作品群はまさにそれ。よって怪談というより神秘小説といった趣の作品が多いように思える。内容もこの手のアンソロジーでは外せないゴーゴリの「ヴィイ」を始め、民間伝承じみたトルストイ「吸血鬼の家族」まさに神秘小説のチェーホフ「黒衣の僧」と名作が顔を揃えている。その分既読の作品も多いけど。小説の背後から妖怪や悪魔などのこの世ならざるものが顔を見せる小説群、存分に楽しめました。
2020/12/02
星落秋風五丈原
1990年刊行版を読了。指を組み合わせて壁にいろいろな形を映し出す遊びに取り付かれてしまった12歳の少年ヴォロージャ。彼が現実世界から遊離して行ってしまうヒョードル・ソログープの「光と影」。
1990/09/02
Ribes triste
物語の登場人物たちが、なんとも人間らしく魅力的。緊迫感が漂う場面でも、どこかおおらかだったり、信心深く生真面目なのかと思いきや、酒を呑みすぎて急に自制のタガが外れていしまったり。一人の人間に内在する矛盾をまるっとそのままに描き出す。そんな中に、ふいに垣間見える深い闇にゾッとする。味わい深い作品集でした。
2020/08/25
あ げ こ
何よりもソログープ。ソログープが抜群にいい。「光と影」…あの密やかで甘美な狂気を目の当たりにする事が出来ただけでもう、幸せ。現の何と、浅く、色褪せていて、無力な事。鮮やかに映える。あの誘惑…甘やかで、重く、抗い難い、楽しさと喜びと、高揚…不安と、戸惑いと、悲しみと恐怖と…幸福な、あまりにも幸福な、狂気であり、破滅。緩やかに沈み行くような、あの充足。抜群に素晴らしかった。全体としては、余地もなく、緩みもなく、ゴツゴツとしたものが多い印象。いずれも低く、低く、暗さと汚穢が沈澱しており、視界が悪く、異様に濃い。
2020/06/19
SAT(M)
ロシア文学の読みにくさを漠然と感じていたのですが、「純粋に文学を楽しむのは罪という風土がある」とあとがきにあり、なるほどと思った次第(読むのに時間がかかった言い訳…)。怪現象を扱いながらも純粋な「ホラー」とは異なる作品が多く収められています。チェーホフ「黒衣の僧」:幸福な精神病まで治していいのか、という問題提起が医者ならでは。ナボコフ「博物館を訪ねて」:夢でも現実でも、どこまでも逃げ続けなければならないような苦しさ…。ソログープ「光と影」:詳細を書かないことで、漠とした不安や恐怖を想像させる技法が特徴的。
2020/07/03
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