東欧怪談集 (河出文庫 ぬ 1-2)
東欧怪談集 (河出文庫 ぬ 1-2) / 感想・レビュー
HANA
怪奇小説アンソロジー。東欧というと深い森の中ではぐくまれた土俗を持つイメージがあるが、本書はその土俗と独特の想像力両方を同時に楽しめる一冊となっている。前者としてはユダヤの伝説を扱った「ゴーレム伝説」や変化球であるが「吸血鬼」、端整な怪奇小説として「シャモタ氏の恋人」や「象牙の女」辺りが目を引く。後者としてはチャペックの「足あと」やナンセンスの極み「笑うでぶ」「こぶ」がいい味出しているなあ。どれも西洋の何となく明るさを持つのとは対照的な独特の陰翳を持つような作品ばかりで、読み応えのある作品ばかりでした。
2021/07/23
penguin-blue
政治的な体制変化から近年では中欧というくくられ方をするようになった旧東ヨーロッパ諸国だが、この本に流れる雰囲気は中欧でなく、東欧。やや粗い石畳や石の壁と、暗くて人があふれる列車や駅、そして体制的な窮屈感。内容は死霊や復讐などべたな怪談話から、風刺めいたものや、ショートショートのような話まで幅広い。「ドーディ」「こぶ」「生まれそこなった命」「静寂」あたりが一味違って好み。体制が変わり、生活が変わっていくにつれ怪談の色合いも今後変わってくるだろうか。
2021/03/31
星落秋風五丈原
東欧はドラキュラ伝説が有名だ。しかしそればかりではない。決闘で今際の際に相手から「自分の剣はテート・フゥルクに持ち帰って欲しい。そして百回のミサをあげて欲しい。」と頼まれたので律儀にその場所へ向かった騎士団長は、一夜にして恐ろしい経験をする。『サラゴサ手稿』かつてファウストが悪魔といたと言われる伝説の館に貧乏な大学生がやってきた。人間何でもいい気になりすぎるもので、もっと金が必要になった学生は、ある恐ろしい企てに手を染める。『ファウストの館』いやぁ、悪魔に勝とうとしちゃいけませんぜ、旦那。
2020/11/01
くさてる
解説にもあるように「怪談」というより「怪談的な要素を持った」東欧の文学アンソロジー。なので、より幻想的で不可思議な話もあって、面白かったです。お気に入りは、なんと理解していいのか悩む、不思議な魅力だったレンチョ「静寂」。ある日、突然、世界から音が消えた「彼」がたどりついたのは……つまり、そういうことなのかなあ。いやもうほんとうにこれ、だれか教えてください……。
2022/11/12
そふぃあ
9カ国26本もの短編が収録されている、かなり贅沢で貴重な短篇集。瘤が自分に取って代わる、ある種分身譚とも言えるコワコフスキ「こぶ」、戦争の最中に亡くしたと思った妻の幻想に踊らされる悲劇的なミハエスク「夢」などが印象に残っている。 その他どれも幻想的で素晴らしかったが、読後暫く経っても印象が特に強く残っているのはグラビンスキ「シャモタ氏の恋人」。恋人?との逢瀬が非常に艶めかしく、主人公が一体何に欲情していたのかと思うと恐ろしい。
2021/11/16
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