犬の記憶 (河出文庫 も 4-1)
犬の記憶 (河出文庫 も 4-1) / 感想・レビュー
佐々陽太朗(K.Tsubota)
文章だけでなく写真が多く収められているが、文庫本で紙質が良くないので写真はそれなりのものになってしまう。ただ、森山氏の写真の質感は充分に伝わる。つまり森山氏によって象徴化、抽象化された記録、あるいは森山氏の言葉を引用すれば「光の記憶と化石」である。また、横尾忠則氏に言わせれば「作りすぎている文章」だが、それがまたイイ。森山氏の写真と文章に記された森山氏の思考が相まって我々に「写真とは何か」を問いかけ迫ってくる。私にとって森山氏の写真は自由律俳句のようなものです。なんの変哲もない風景が心を揺さぶります。
2015/05/28
RYOyan
1960年代の大阪、東京、青森と放浪してみたい。そしてカメラを質にいれて、場末の酒場で写真論やりながら飲み明かすのだ。現在と違って手触りのある街場感に惹かれて、何度もページをめくっていた。
2016/10/23
galoisbaobab
森山大道のOn the Road。「過去とはつねに現在の比喩なのではなかろうか」とはよく言ったものだ。ボクらの記憶って「自信の内部に懐かしく立ち現れる、かく在りきイメージの再現行為などではなく、現在を分水嶺として、はるか前後へと連なっていく大いなる時間に向けて、したたかにかかわっていく心の領域のこと」だろうからね。つまり写真というコトもイメージではなく見る者の心の動きそのものであるんじゃないかな。でも、森山大道はボクよりももっと謙虚だ。未だに「写真とな何か?」という命題の前で途方に暮れている。
2016/10/01
jahmatsu
記憶の自伝的エッセイ集、物凄く男くさく路上な世界観。カッコ良すぎだろこれ。昭和臭も良。大道氏の写真関連はカッコイイが先行しすぎていてなんとなく今までスルーしていましたが、今更ですがじっくり見たくなった。
2017/07/23
misui
光=記憶=写真=歴史=自己をめぐる過剰なまでに感傷的な文章を追っている間はうんうんと頷くも、読み終えて顔を上げるとどこか居心地の悪さを覚える。それだけ森山大道という個人に密着した文章であるのだろうし、解説で横尾忠則が言うように一種の文芸作品として読むべきなのだろう。いつかこのような生と自分の生が交錯するのか、それともしないのか、忘れた頃に再読の機会を設けて確かめたい。続編も読もう。
2017/07/19
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