嘘と魔法 下 (須賀敦子の本棚 5)
嘘と魔法 下 (須賀敦子の本棚 5) / 感想・レビュー
ヘラジカ
生ける屍たちの狂気の物語。なんて密度、なんて熱量、そしてなんと淀みのないことか。醜き人間たちのどぎつい感情の洪水は押し寄せては読むものを圧倒する。素晴らしく饒舌な語りによって、満たされぬ者の情念が渦巻く様を脳内で否応無しに再現させられてしまうのだ。読み続けていると冷や汗がでるくらいに濃厚な読書。登場人物たちの歪んだ結びつき、エドアルドを頂点とした愛と憎しみのピラミッド、エリーザの語る区別不能な嘘と真実。とても一読では消化しきれない。悪夢のような読書だった。
2019/01/06
駒子
この小説に善人はいない。主人公が敬愛し、讃える母アンナの悪辣と言いたくなるほどの自尊心の高さ、フランチェスコの貧しさを隠す嘘、そして我らがエドアルドの傍若無人な振る舞いの数々。彼らに驚きこそすれど、嫌いにはなれないのは語り手の妙か。語りが魅力的でずんずんと物語の深いところまではまりこんでいく。好き。入院中、夢中になるのにぴったりな本だった。
2019/10/27
Mark.jr
テーマはズバリ「愛の不毛」。まず、貧乏から成り上がろうとした女とそれに惚れたが故に没落した男。その二人から生まれた娘と、その娘が思慕するプレイボーイのいとこ、さらに娘に恋するいとこの親友とその親友を慕う女性と昼ドラも真っ青の愛憎劇ですが、軽やかな文体でグイグイ読ませてきます。相当な力作であり、間違いなく著者を代表する作品でしょう。
2019/06/16
やくも
孫娘エリーザが祖母の結婚から母の一生、自身の現在までを語る、三代にわたる家族の物語。800ページ超かつ2段組の大長編に、読みとおせるか自信をもてないままページを開いたが、登場人物たちの掛け引きと成り行きと運命に導かれ、先を急かすように読み進んだ。
2019/01/27
アシモ
ヘビーな読書体験でした。虚栄心の凄さは日本人には理解しづらい。
2019/08/26
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