失われた探険家 (奇想コレクション)
失われた探険家 (奇想コレクション) / 感想・レビュー
榊原 香織
途中から身構えながら読んだ。 グロイ話をさらっと。”もっとも信頼できる「信頼できない語り手」”とはそういうことか。 人間よりも、蠅の方が生き生き描かれる。 ポストモダン・ゴシック 奇妙な味わいの短編集。
2022/02/26
sin
悪臭と天使、裏庭の探険家、呪いと貞節、頑健な画家、雨樋に下着、インタビューに罠、マラリアと貧血、心理学者妖精、廃屋の歴史、右手の性欲、長靴の憂慮、饒舌な蠅、思わせぶりな旧家、監禁ストーカー、杭打つ淑女、傲慢な家長、挙動不審な医師、妄執のバイオリニスト、不倫の決意。何が潜んでいるかはわからないが、どれも繊細なようで煩雑、革新的にみえて凡庸な、そして言葉の美しさに憧れた文章に潜んだ意外だが想定内で、拭いきれないエロスを感じさせる物語が繰り広げられる。まさに奇妙な味わいの短編集だ。
2024/11/01
こばまり
「スパイダー」で私を奈落の底に落としたマグラアの、こんな作品集が編まれているとは。表題作が特に気に入った。あとがきで作家の出自を知り、育った環境がその後の世界観を形成するものだとつくづく。新作を書いてほしい。
2018/10/06
藤月はな(灯れ松明の火)
腐臭、ピグミー、マラリヤ、血液欠乏による吸血、精神分析、圧制的父親、両性具有、そしてカフェオレのように入り混じる、異なる時間。最も信頼できない語り手が紡ぐのは狂った心が構築した理屈か真実か。純真な魂が宿ったとしても朽ちてゆく運命の肉体に囚われたのならば魂は腐りゆく肉体に囚われたままという悍ましさを描いた「天使」、「お巡りさん、こいつです!」を素でいける聖職者の喜劇の「アンブローズ・サイム」、「吾輩は猫である」の長靴版である「長靴の物語」、愚かな父親の愚かな結末、「悪臭」(悪臭=自分の加齢臭じゃ・・)が好き
2013/07/29
ライマウ・フレツリー
すごいメンツの本シリーズ中でも一人奇想コレクション感高めな本作。フォークナーのミニチュアのような正統派(風←大事)南部物「マーミリオン」に痺れた!
2018/02/11
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