クリュセの魚 (NOVAコレクション)
クリュセの魚 (NOVAコレクション) / 感想・レビュー
とら
東浩紀さんは自分が好きな雑誌とかサイトとかでよく見かける。三島賞を受賞した時、色んな好奇心が集結して物凄く読みたかったが文庫化するのを待つという結論に達し、したはいいけど結局初読はこの作品となった。本当に面白かった。流石サブカル等を徹底的に論じているだけはある。ツボを抑えてくる。こういう場面は無いと!キャラの性格はこう!とか。でもSF要素も凄くてハルヒの長門とか円城塔さんの「Self-Reference ENGINE」にある短編みたいな感じ。批評とかは分からないけど、とっかかりだけでも作ってみようかなあ。
2013/12/03
七月せら
自由と繁栄を謳歌していた火星経済圏を取り巻く情勢の変化に激動する時代の中、1人の少年と少女は出会い、その古風な交際が彼らの運命を変えていく。火星の海を自由に泳ぐ魚がいたかもしれないように、いつか未来にそんな光景があるかもしれないように、無数に存在する選択肢からたった1つの今を選び取り続けていくということ。人は本当に何気なく、「かけがえのない今」を生きているのだと深く感じました。
2018/04/08
うめ
人は目の前に広がる無数の波の中から、たった一つを選び取り、出来事を”過去”へと変換できる能力を持つ。波動関数を発散させて再度収束させても、それはもう、前とは全く違うことなのだから。無限大の未来の前で1人の人間が選び続けた道は細く強靱であるが故に、無数に絡まり影響し合って、宇宙に消えない歴史を刻み続ける。人は、失敗して失って傷ついた事をも受け入れ、選び続ける強さを持っている。やり直さない力。膨大な情報と不確定の海の中から、この世界に唯一無二の今を選び続ける人の道はとても尊い。これだからSFはやめられない。
2018/02/20
えも
ボーイ・ミーツ・ア・ガールですねえ。25世紀の火星にしては、ピュアな主人公だねえ。人間の本性は変わらないねえ▼火星の都市の名前が「アマルティア・セン」というセンスは好きですよ!
2022/09/30
SOHSA
『クォンタム・ファミリーズ』に続く東浩紀の小説第二弾。小説としての完成度は、やはりクォンタムより本作の方が上か。前半は背景と意図がなかなか見えづらく、やや辛抱が必要であったが、後半以降の流れるような展開は素晴らしかった。一見してSF小説ではあるが、クォンタム同様、本作も東の思想・世界観が色濃く織り込まれており読んでいて楽しい。これもまた、クォンタムと同じく再読、再々読することで、作者が底流に潜ませた新たなファクタが見えてくるような気がしてならない。東浩紀が嫌いでなければ、是非、お奨めしたい1冊である。
2013/11/23
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