「原っぱ」という社会がほしい (河出新書)
「原っぱ」という社会がほしい (河出新書) / 感想・レビュー
さきん
養老氏は原っぱ=子供の領域がある、空き地=大人の領域という風に説明していた。その意味では既視感はある。お金が価値に占める割合がバブル以降も高くなり続けているため、三島由紀夫氏の危惧する経済至上な中身空っぽ日本が醸成されてきている。子供が空き地で遊ぶと不動産の価値を棄損したり、周りの住環境の質を低下させるという危惧から入るべからずと柵で覆い、ゲーム会社が子供の遊びを囲い込む、対人関係を磨けない子供たちは内側へ閉塞していく。ゲームも大事だし、不動産も大事だが、もっと価値に対する遊びが欲しいと思った。
2021/04/03
templecity
昭和の終わりの記述に始まり東京オリンピック直前までの記述。著者自身がオリンピック開催直前の2019年に亡くなっている。昭和天皇崩御の時代も皮肉っぽく記載。バブルの時に不動産を購入して1坪600万円で借金を背負って生きる。
2021/02/23
れん
内田樹さんの序文で、結構満足してしまった。私には難解な橋本治。昭和から平成の考察が印象的。癌の話は切なく、スピーチは清々しく。喪失感と感謝の気持ちで本を閉じました。
2022/02/23
Inzaghico (Etsuko Oshita)
今は「空き地」はあるけれど「原っぱ」はない、という発言は、じっくり考えたい。空き地に勝手に入れば不法侵入になってしまう昨今、原っぱで子どもが約束もしないのにどこからともなく三々五々集まって、缶けりしたりドロケイしたりして遊んで、夕方になると散っていく、という光景を見なくなった。これはかつて夏彦翁が、昔は約束なしに相手を訪問できたが、今は先に約束を取り付ける、時代は変わった、みたいなことを書いていたが、それと通じるな。
2021/03/29
amanon
内容はともかくとして、巻末の闘病記を読んで、「ああ橋本治はもうこの世にいないんだな…」と改めて思わされた。その内容は凄まじいはずなのに、飄々とした多分にユーモラスな語り口で、「この人は死ぬ寸前までこんな風だったんだな…と思わされた。表題作は、例によって語り口は平易だけど、妙に回りくどい言い回しを多用しているため、今一つ分かりにくいが(笑)、著者が体験した「原っぱ」の価値は理解できた気がする。もとは講演を活字化したもので、途中何度も感極まって泣いてしまう場面があるのが、リアルで、何とも言えず、胸がつまる。
2023/02/27
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