澁澤龍彦全集〈11〉 女のエピソード,偏愛的作家論,変身のロマン,悪魔のいる文学史,幻妖 他
澁澤龍彦全集〈11〉 女のエピソード,偏愛的作家論,変身のロマン,悪魔のいる文学史,幻妖 他 / 感想・レビュー
梟をめぐる読書
まずは七〇年代初期を飾る重要作である『悪魔のいる文学史』。かつて「魔的なものの復活」のなかで提唱された文学史再編の試みとして、あるいはサドやブルトンら〈黒い太陽〉を中心に置いたフランス文壇史の逆照射として、隠秘学の伝統に関わりをもつ作家たちの奇怪な群像が初めて浮かび上がる。対照的に『偏愛的作家論』は、日本の作家について論じた文章のみを纏めたもの。いずれも発刊までに『ユリイカ』が関わっており、同誌との蜜月時代はここから始まる。女性誌連載の『女のエピソード』ほか、アンソロジーの解説や一九七二年分の補遺も収録。
2013/07/04
ネロリ
「女のエピソード」「偏愛的作家論」が、特に面白く読めた。「三島由紀夫とデカダンス」では、三島氏の文章を挙げて鋭い指摘を入れるなど、愛情溢れる評論が楽しい。マゾ論のスピード感が冴える「谷崎潤一郎とマゾヒズム」や、類推に引き込まれる「堀辰雄とコクトー」も魅力的。自分の反省点は、「悪魔のいる文学史」で挫けたこと。【文章は圧縮すればするほど密度が濃くなり、したがって読む側から見れば、スピード感が増したように感じられるのだという創作上の秘密を、堀辰雄はコクトーから学んだのである。】
2012/04/03
季奈
『悪魔のいる文学史』はベル・エポックにおけるフランス文学史の小噺ともいえる形で書かれており、ゴーティエやランボーといった、文学史上で大きな爪痕を残した文人たちに少なからず関わりを持っていた人々が紹介されている。(マゾッホなどもいるが) またレズビアンの語源ともなったサッフォーや、サド侯爵夫人のルネのエピソードなど、いかにも澁澤らしいモチーフの解説もされている。
2021/02/14
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