澁澤龍彦全集〈14〉 旅のモザイク,M・W・スワーンベリ,幻想の彼方へ,思想の紋章学,補遺
澁澤龍彦全集〈14〉 旅のモザイク,M・W・スワーンベリ,幻想の彼方へ,思想の紋章学,補遺 / 感想・レビュー
梟をめぐる読書
1970年に憧れのヨーロッパへと飛んで以来、澁澤龍彦はフットワークを軽くして、あちこち旅行へ繰り出すようになる。その成果は実物の見聞録を兼ねた美術エッセイ(『幻想の彼方へ』)や純粋な紀行文(『旅のモザイク』)として結実されたが、内的変化という意味では、むしろ彼に日本という土壌の特殊性を〈再発見〉させる契機としてより強く働いたものと思しい。『思考の紋章学』はその反映として東洋の古典や怪異譚をはじめて積極的に採り上げた著作であるばかりでなく、そのスタイル自体の無志向性、無目的性によっても注目される怪作である。
2013/07/17
季奈
書斎作家澁澤の紀行文「旅のモザイク」には、パレルモの記述があるものの、「ヨーロッパの乳房」よりも、国内旅行記が多い。 旅のコンセプトは、風地火水の四大元素に基づくものであり、それに従って編集者が旅先を提案するといった具合だったようだ。 タイトルも龍子夫人が考えた所からも、澁澤はこれら旅行には少し受け身な姿勢であったのかもしれない。 個人的には、青森の龍飛崎の風が、我々の忘れた自然の驚異を感じさせることから気に入っている。 「思考の紋章学」は、エッセーから『唐草物語』等のフィクションへの移行が意識されていた
2021/05/19
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